第11章 ラングラー
ー穂波sideー
甘やかされすぎてる。
本当にそう思う。
研磨くんどころか、治くんに。
蛍くんにも京治くんにも。
カズくんにも。
研磨くんと車で話して、あるところ、いつものところ落ち着いたものの、
信介さんに言われたことと、それから今、治くんと研磨くんがお話ししているってこともあって、やっぱり考えが巡る。
料理に集中して、ふとぼんやり考えてを繰り返して、
ふと、古森くんに質問を投げかけていた。
「好きな子くらいいたらいいんだけど、いないな〜。
俺も治くんとかカズくんみたいにあっけらかんと穂波ちゃんのこと好きになれたらいいんだけど」
『………』
「結構俺、そういうとこ堅いみたい」
『そっか… 恋したいなとは思うんだね』
「普段から思うわけじゃないけど、いいなって思うカップルの姿見てるとやっぱ思うかな」
『うんうん』
「穂波ちゃんは?」
『え?』
「恋、してる?」
『え?』
そんな質問、ここ1、2年、されてこなかった。
もう研磨くんと3年一緒にいて、わたしはまだあたらしい世界に出てなくて…
だからみんな、わたしと研磨くんのことを知ってて。
わたしが研磨くんのことを大好きなこと、みんなが知ってて……
だからきっと、古森くんはこの質問は、敢えて、してくれてる。
わたしが、古森くんに質問ばかりしちゃいそうだから。
…ほんと、優しい。
『恋、してるよ。 ずっとずっと、いい恋をね、させてもらってて。 …それにね、』
魔法みたいに、解けてくる。
わたしの勝手な罪悪感による凝り固まったもの。
研磨くんが何度もほぐしてくれて、
それでも成長しないからまた、やっちゃって、またできるやつ。
それが、するするって、解けてほぐれて、溶け出して。
古森くんの持つ、魔法みたいなもの。