第11章 ラングラー
ー古森sideー
穂波ちゃんは鶏肉を調味料に漬けたり、
ステンレスの串に野菜と肉を刺したり、してる。
治くんの声は聞き耳を立てずともテントの中まで聞こえてきたし、
ぼんやりと、今の状況がわかるくらいには情報処理をしてしまった。
角名は「俺はちょっとやめとく」とのことで、ハンモックに戻ってきたし。
聞けば、かわいい顔で見られたら手出してしまうかも。
でも、今はややこしくするだけだから、やめとく。とのことだった。
角名らしいな、とか思って、
俺も行かない方がいいのか?とか自問自答したけど、
いや別に俺、手、出さないし!
普通に、穂波ちゃん放っておけないかもとか思って。
いや別に研磨くんと治くんが喧嘩してるわけでもないし、
特別穂波ちゃんに元気がないわけでもないんだけど。
でも複雑な心境だったりするのかな、とか思って。
声かけたら、強請るようにここにいて、とか言うものだから、一瞬頭がくらっとした。
海外での生活とか、英語での会話がわりとふつうにあるこだから、
もしかしたらニュアンスは英語の会話で、それが日本語になってて、みたいなとこあるのかもしれない。
穂波ちゃんって、時々そういう、どきっとする言葉の使い方をする。
わざとでも、あざとさでもなんでもなくって、
文化の違い、って言うのがしっくりくるような…
言葉の使い方、だけじゃなくて、スキンシップの仕方とか仕草とかも… 言っていけばきりがないけど。
だからって日本に馴染んでないとか、そういうんでも全くなくって。
ただただ、持ち合わせてる全てが魅力に変換されてる子だと思う。
ちょっと抜けたとことか苦手なこととか、できないこととか。
そういう、いわゆる俗にいう欠点?も含めて魅力みたいな。
完璧じゃないが故に完璧な子だなって。
『…古森くんには好きな人、いる?』
ちょっとぼんやりしてるのかな、って感じだった穂波ちゃんが
顔を上げて口を開いたかと思うと、割合唐突な質問が投げかけられた。