第11章 ラングラー
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「穂波ちゃん、なんか手伝う?」
治くんが仕込んでくれたもの、
その仕事の美しさにジーンとしながら固まっていると古森くんが来てくれた。
『あ、うん? そんなに大変じゃないから大丈夫だよ。 けど…』
「うん、けど?」
『ここにいて…ほしいな?』
「えっ? あ、うん、もちろん。 じゃあここ座ってればいい?」
『うん、何か座りながらできる単調作業が思いついたら言うかもしれない』
「もちろん、いつでもなんなりと!」
あぁ、カズくんがあんなにも古森くんを牽制していた意味が、ようやっとわかった。
本当に、本当に、古森くんは…… 寄り添うのが上手い。
どうしたの?大丈夫? とか、 いいよいいよ、休んでなよ とか、
いや俺もやりたいからやらせて! とか。 いろんなパターンがあるだろう。
そして、そのどれもが、その人らしければ、例え今の気分に沿わなくても嬉しい。
それは間違いない。
でも古森くんはいつだって。
絶妙な塩梅で空気を読んだり、あえて読まなかったりして、誰かに寄り添う。
そして、誰も一人ぼっちにしないタイプの人だ。
だからそう、例えば海外ドラマで……
「2人のハイスペック男子に取り合われて疲れてる女の子に寄り添って、
そのまま自分のものに〜とかしないから大丈夫!」
『…! びっくりした、同じこと考えてた……』
「あはは! ごめん、警戒しちゃうねそれだったら」
『ううん、大事なのはそこなの。 頭を使ってその位置を手に入れるタイプの子と、
自分にとって当たり前のことをただやってたらその位置にいつの間にか、って子がいると思うんだけど』
「あー、確かに! 前者はいい人と見せかけて、結構計算の末の、的なね。
ハンサムで静かで優しげで、でも実はちょっとせこい的な。 俺には無理だなー」
『うん、そうなの。 古森くんは120%で後者なの』
「へー!」
『へー!って… だから、うん、そういうとこ』
そういうほんとにただ持ち合わせた感じが、カズくんの懸念してたとこ。
…って、別にわたしは古森くんを好きになっちゃったとかそういうんじゃないんだけど、
あまりにも、あまりにも、古森くんがMr.パーフェクト過ぎて。
そんなことを思った。