第11章 ラングラー
ー穂波sideー
「あーあ、せっかくの申し出だったけど……」
そんな、状況じゃないよね。うん。
「後にとっとくことにする。 …これおれが出てくのがいいの?」
『え、ん? それはどっちも……』
かっこいいけど…
ここでくるのを待つのも、自分から迎え入れるのも…
ってわたしはことの発端をすっかり忘れて、
治くんからでた “宣戦布告” というワードに持ってかれてしまってる。
完全に、研磨くんの位置に想いを馳せて、どきどきしてしまってる。
宣戦布告される、研磨くん……
「…ふ なんか大事なこと忘れてほわほわしてるみたいだけど……」
『………』
「誰のことをめぐっての宣戦布告なんだろうね」
『……あ、』
「…ふ おれが言うことなんてわかってるでしょ?治くんを牽制したりとかしないから。
心の準備を決めるのは、おれじゃなくて、穂波だよ」
『………』
「ふ 笑 まぁ、大丈夫。 穂波はおれのだから」
『………』
「ていうか、別にそんな、仰々しいことじゃないと思うけど。治くんだし。
…あー、でも。 電話、おかしかった……笑」
研磨くんはズボンを整えながら、またくすって笑って。
それから片手でわたしの後頭部をぐってして、そのままキスを。
「なに治、そんでまた、立ち往生してんの? ノックしないの?」
「だって、いま最中かもしれんやん!結構長電話になってしもーたし」
「は? 本気で言ってるの?
あんなでっかい声ですぐそばでしゃべられて、そのままヤってるわけないじゃん。
エロい2人ではあるけど、そこまで単細胞ではないでしょ」
「…そっか、それもそうやな。 ちゅーか、全部聞こえとったん?」
「聞きたくなくても聞こえる声だったし」
「聞こえん声でも聞いとっただろが、角名は」
「まーそうかもしれんけど。 車の中で困ってんじゃない? 2人」
倫ちゃんと治くんのやりとりが聞こえたかと思うと、
コンコンって窓がノックされて。
治ですー、今ええですかー?
って。