第11章 ラングラー
『んはぁッ 研磨くッ……んっ……』
「ん?」
『誰か… いるかも』
「だめ? 前の電話とは違うよ? これは聞いてる方が悪いし、誰も心配はしない」
『だっめッ…… わたしだけのっ……』
「え?」
そりゃ穂波の甘い声も、とろんとした顔もおれだけのだけど。
なんで今おれが穂波だけのになるの。
いやおれこそ、穂波だけのだけど。
ちょっと混乱。
それからちょっと意地悪、したくなる。 思ってもないこと言いたくなる。
「どの口が言ってるの? 治くんにもその顔見せたんでしょ?」
『見せてなっ……』
「見せてるよ、だって穂波キスしただけでいつも……」
『やぁッ……』
おれのことがすきだからこその、この感じ。
自分がやっちゃったことに対してバツが悪くて、なんか。
何言っても従いそうな感じ。
精神的に自立した穂波だからこそ、こういう姿にたまにさせると、刺さる。
あーもう、プレイじゃないけど… プレイなんかじゃ… ないけど。
でも攻め方によっていろんな顔になるの、
いろんなパターンになるのおもしろすぎる。
1人で十分だし、やっぱおれは穂波しかいらない。
「…ふ」
『研磨くっ… 意地悪しないで…』
「…やだ だって意地悪されたって、ここ」
『んんっ……』
濡らしてるんでしょ?
「…どうしたい?」
『…ほ……』
「ほ?」
『ほしいもん』
「…ふーん、でも、誰かここに」
カーテンをそっとまくってガラスの向こうに目をやると、聞き耳を立ててる影が… 2つ…
治くんと角名くんだな、これ。
治くんの耳はこの辺かなってとこをコンコンってする。
「いるみたいだけど?」
『………んっ 我慢するっ』
「そだね、仕込みもあるもんね… 美味しいご飯食べたいし……」
『でも…』
「でも?」
穂波は決まり悪そうにおれの目を見つめては逸らしながら、
口で、させて? って言った。
上目遣いで。
エロすぎてずるい。
この流れじゃまるで、せめてお詫びに、みたいな感じだ。