第11章 ラングラー
ー治sideー
2対1になるんもあれやなって思ったし、
研磨くんとしっかり話したいってまじに思うんやけど。
そんでも好きな子に先に謝らせて、
なんか春高で北さんに言われたこととちゃうけどなんつーか。
真鯛の刺身と刺身用の茹でダコをそれぞれマリネにしといてから、
いっぺん穂波ちゃん達の車に行ってみようと思った。
真鯛はレモン汁と塩胡椒だけで。
タコは玉ねぎとトマトとバジルも一緒に。
そうしよって穂波ちゃんと店で話しとってん。
「治なにやらかしたん?」
ラングラーに向かって歩いてると、ハンモックで携帯見とるはずの角名がいきなり言うてくる。
角名は北さんとは全然ちゃうけど、こういうようわからん冷静さと観察力に、
ぎくぅぅってさせられることも多い。
俺とツムが喧嘩するんも、匂い嗅ぎつけとったみたいにそこにおって、いっつも動画撮ってたしな。
「なんもやらかしてないわ!」
「ほーん… 謝り行くときの背中だけどな」
「謝るんちゃうわ! 宣戦布告や!」
「宣戦布告?」
ハンモックに転がってた角名が上体を起こす。
「撮影とかお断りやぞ!」
「ちぇ…」
「当たり前やろがい」
ほんでラングラーのとこまで来たんやけど、どないしよ。
ノックする? 別段、喧嘩みたいな声は聞こえてけーへん。
まぁ、この2人が喧嘩するなんて思ってないんやけど… してもええのになぁ?
ノックしてみよか。
後ろのドアんとこコンコンってしたら、どんって車がちょっと揺れた。
なんやろ、思って窓ガラスに耳充てたら
『…んっ あっ……』
あかんの聞こえてきた。
前電話でいっぺん聞かされたやつや。
いや俺ノックしたよな?
研磨くん、これわざとやってんの?
しかも2回目やぞ、なんなんまじで研磨くんって。
宣戦布告するどころか… 逆に宣戦布告されてるやん俺。
こっわ……
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