第11章 ラングラー
あぁもうどうしてみんな、こんなにも。
『優しいんだろ……』
「ちゃうちゃう、優しさなんかやないよ」
『………』
「ほんまに優しかったら、もっと遠くから眺めてるわ。
そもそも手なんか出さん。 いや出すかもしれんけど、俺のそれとはちゃうわ」
『………』
「古森くんとかな、まず、抑えれてるやん? 気持ちが膨らんでしまわんようにしてる。
ああいうのとか優しいと思うしな」
『古森くん…』
「あとは、気持ち伝えたとしても、なんか見守ってくれてる感じの人らもおるんと違う?
俺の勝手なイメージやと、あの、梟谷のセッターとかな、そういうイメージあるけどな。
仲ええんやろ? 赤葦、やったっけ?」
『京治くん…』
「北さんがどないな感じか知らんけどあの人も怖いけど優しいしな」
『信介さん…』
「あとはー まぁ、俺より大半の部分が人でなしやけど、
マジのマジの核心のとこではツムの方が優しいんちゃうかな。
ツムは浮気とか二股とか一夫多妻とか一妻多夫とかありえへんいうタイプやし」
『一夫多妻……』
「研磨くんに至っては優しいんか狂気なんかわからん」
『………研磨くんは優しい。 治くんも優しい。 みんな、優しい』
「俺は優しいんとは違う。欲しいもんは欲しいし、困らせたないからって諦めれん」
『…ん』
「まぁそうやって研磨くんに伝えるつもりやし、
そもそも研磨くんはそんなんもうわかってそうやけどな」
『………』
「ほんならまぁ、帰ろか!仕込みもしなあかんし! アイスうまかったな!」
『うん、美味しかった。 …治くん、ありがとう』
「それは何に対して?」
『全部、今日の全てに対して』
「ぉん! こちらこそ、ありがとうな。 ていうか、穂波ちゃんずっと外に立ったままやんな。
暑かったな、ごめんな。 ほな、行こか」
助手席に乗って、ベルトして。キャンプ場へと戻る。
研磨くんは、流石に呆れるだろうか。
こんなのもう、何回目なんだろう。
それに今回の、わたしが抱く好き、は、
蛍くんや京治くんへのそれとは、ちょっと違う。
もっともっと、まやかしなしで、純粋に惹かれてしまってるんだ。
身体が、猛烈に、治くんに。