第11章 ラングラー
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「これ俺、謝らなあかん? …ちゃうねん、責任逃れとかと違うで。
ただなんか、そういう感じとちゃうかったし、謝らないかんことにしてまいたくないんやけど」
『…治くんが謝ることは一つもない』
「穂波ちゃんも謝らんとってな」
『いやでもわたしは……』
あそこまでしておいて、結局、治くんの気持ちには応えられない。
そんなの、謝らなくていいわけない。
『治くん、ご…』
「あーーー!聞きたない!謝られたない!謝られたら俺も謝らなあかんやん!」
…あぁわたしこれ、蛍くんにも言わせてしまったことある。
2年の時、森然合宿最終日、BBQしてるとき。
今もせっかくの楽しいキャンプを。
ほんとわたし、どうかしてる。
もう喉まで出てできている、ごめんなさいの言葉をぐっと飲み込む。
自分が、すっきりするためだけの言葉にしてはいけない。
『治くん、あのね、今までも今日ずっと核心を避けてきたんだけどね。
さっき信介さんに言われて、いい加減自覚したの』
「………」
『わたしね、治くんのことがすき。 なんだろもう、身体が欲しがっちゃう感じ。
治くんに食べられたい、って勝手に、って言うと無責任だけど、もうどうしようもなくなる』
「………」
『だから治くんの言う通り、浮ついてはない…と思う。 今のは何かの間違い、なんかじゃない』
「ぉん… わかっとったし、嬉しいで」
『…ん、でもね、』
「その先もわかってんねん、やから言わんでもええ」
『でも、』
「言わんとってくれんか?」
『………』
治くんの見たことないような真剣な顔と真剣な声。
やっぱりわたしはそれすらも突っぱねて自分の言いたいことを言うのは、できない。
「なんかあれやし、ささっと研磨くんに話してまう?
俺らが変に隠しても絶対研磨くんなら見破るやろ、そんなら海行く前に…」
『うん、でもそれはわたしがすること』
「せやな、俺は俺で話すわ。 2対1みたいになるのいややしな」
『ん、治くん』
「んー?」
『わたし達って本当……』
「相性とか思考とか、合うてるよな。ほんまに俺もそう思う。
やから、あきらめれんし、諦める気はさらさらないで?」