第11章 ラングラー
ー穂波sideー
夜はバーベキュー。
コンビニで氷を買って、クーラーボックスに入れておけば大丈夫かなって
お肉や魚介類も買ってしまうことに。
いやでも…
「刺身食いたいな!」
『んね… 明日のお昼に食べるにする?』
「せやな、そしたらあれ、ちょっとだけ刺身買うて…」
『マリネにしとこっか』
「な!」
ほんとにほんとに、ほんとに治くんとの食材調達楽しい!
それからきゃっきゃ言いながら、いろんな食材をカートに入れていく。
「俺な、あれやねん。 デートスポットとか観光名所とかよりな、
地元のスーパーとか道の駅とか行くのが好きやねん。
そんな大層な海外旅行とか行かせてやれんかもしれんけど、
1年に1回とか、まとめて休みとってどっか宿とって、
なんか普通にな、暮らすみたいな旅行したい思う」
『……』
「そらもちろん海があるなら海も行くやろし、山があれば山も行くやろけどなんちゅーか……」
『……』
「普通にな、気張らんと行きたいわ」
『うん、わたしも』
「そうやんな、なら大丈夫やんな? いつか結婚して、店一緒にやって、そんな風に過ごそな」
『うん』
「………は? 今、うん、言うた?」
『え、あ、うん? ……え、あ、うん!?』
「やっば、プロポーズ、受けてくれたんやけど! やっば!』
あまりに、自分の好きな旅のスタイルと。
いいなって思う、パートナーシップのあり方のイメージに。
普通に、うん。って言ってしまってた。
そんな、どうしよう、ここで断り直すってなんかあれだけど、
断らないのもおかしい。
「ひゅー!おめでとー!なーんかいい感じのカップルって思ってたら、
こんなとこでプロポーズなんてやるね〜」
「2人とも若いよな? 酒は飲めない歳?」
『え、あ、はい?』
「今日BBQでもすんの?」
『あ、はい』
「もうたっぷりカゴに入ってるしな〜 じゃあ、これ!もらってくわ」
『…え?』
「いやちょっと!それ俺と穂波ちゃんで目利きごっこして選んだ大事な食材なんやけど!」
「まぁいいからいいから」
そう言ってよーく日に焼けた3人の地元の3、40代くらいの男性たちは
わたしたちのカートにあるカゴをひとつ、レジへと持っていってしまった。