第7章 su casa
「よろしくね、穂波」
『うん、よろしくね』
「…ふ 泣かないで」
研磨くんの手がそっと頭に添えられる。
その温かい手は優しく髪を撫でながら、親指で涙を拭った。
『…うれしいな。 研磨くん、わたし嬉しい』
「うん。おれもだよ」
唇がふっと重なり。
触れるだけのキスを何度も交わす。
「…ん やりたい放題できるから、気をつけなきゃだ」
『…笑』
「…穂波、写真って持ってきた?」
『お父さんからの? うん。持ってきたよ』
「寝室に飾る? シゲさんの写真だから廊下とか飾りたくなるけど、
流石に自分たちの写真廊下に飾るのは、…チョット」
『…笑 うん、そうだね。寝室、いいかもね。壁に飾れるかな?」
「うん、あそこは砂壁じゃないし」
前の住人がDIYしたのか、寝室、仕事部屋、ゲーム部屋に使ってる並びの3部屋は
壁にベニヤが貼られて、上から珪藻土が塗られてる。
だから壁に、ピンもさせる。
「ほんとは仕事部屋に置くのもいいなって…チョット思うんだけど」
『…?』
「なんか、ほら、さ」
『…?』
「…寝室にする」
『…?』
どういう意味だったんだろう?
「ていうか周平からの…」
『うん。周平からの』
家電製品のあれこれは、とりあえずリストを送ったもの全て、
うちとカズくん家と周平の家によって購入がなされた。
買わなかった分はこっちで買うから…という研磨くんの声は無視された…わけじゃなくて、
はぶれなかっただけだ、とのことだった。
その際、周平がはぶられたんだと、周平が言ってた。
あ、お兄ちゃんも。
──「俺も結構稼ぎ出してんだけどね、なんせハイスペックだから」
まだお前も高校卒業したばっか、これから新生活するわけだし、だとか
よくわかんない理由を並べられたって。
だから、ちょっと、はいこれ。って。
車にいつの間にか積んで、紛れ込ませていた段ボールから箱を取り出すと
研磨くんにほいっと渡した。