第7章 su casa
ー穂波sideー
「…なんか騒がしかったね」
周平たちがテイクアウトしてくれたご飯いろいろをわいわい食べて、
銭湯行こうって言い出して、銭湯に行って。
車でここまで送ってくれて、それから4人は帰って行った。
いきなりぽかんと残されたわたし達は、もういつでも寝れる状態で。
そんな状態で、玄関で立ったままぼけっとしてしまう。
『…ね、わざとかな、わかんないけど。今日はお祭りみたいだったね』
「…ん」
『明日は市役所も行くし… 今日はもう寝る?』
「うん。でもお茶飲みたい」
『うん!お茶飲もう』
急須と湯呑みはおばあちゃんがくれたのがある。
研磨くんと一緒に暮らせるんだ、って言ったらじゃあこれ持っていきなさいって。
それで、五穀茶を淹れよう。
そして、湯呑みではなくてあの、カップで飲もう。
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こたつの机のとこでゲームをしてる研磨くんにお茶を出す。
お盆がないから、両手に一つずつ持ってきた。
要るもの、また一つ発見。
お盆。必要だ。
「…あ、カップ」
『…ん』
「並んだね、やっと」
『…ん、やっと』
やっと、だって。
何だかこの日をずっと待ってたみたいな言い方してくれるものだから。
胸が締め付けられるような、感じ。
嬉しくて、でもどこか切なくて。
「…あ、穂波」
お茶をひと口、ふた口と啜った研磨くんがカップを机に置いて、
部屋着のポケットに手を入れる。
「はい、鍵」
『…あ、うん』
不意打ちでもなんでもない。
もう暮らすことは決まっていたのだから、わかっていたことなのに。
鍵、嬉しい。
まるで不意打ちのようにはっとして。
息が止まるかと思った。
研磨くんの鍵にはお母さんが作ったタッセル付きのキーホルダーが付いていて。
わたしも、お揃いの糸でできたボンボン付きのそれを取り出して付ける。
実家の鍵、自転車の鍵、それからわたしたちの、家の鍵。
研磨くんの鍵の隣に並べておく。
カップも、キーホルダーも。
やっと、並んだ。