第6章 リレー
ー穂波sideー
「ただ… なんでもない」
蛍くんが言葉にすることを拒んだ。
でも言葉にしてもらいたくて話を振ったわけじゃないから。
クチポールのティースプーンとデザートフォーク。
よほどのことがない限り、ずっと使えるだろう。
必要であれば、これからもきっといつでも買い足せる定番のライン、
GOAのシルバー×ブラック。
お母さんもこれが好きで、うちの実家のカトラリーは基本これだ。
…仁花ちゃん、蛍くん、みんなみんな。
わたしのことを考えて選んでくれた、その時間がなにより、嬉しい。
…どんなふうにお礼を返せるかな、とか。
受け取った側から、そんなことを空想してしまう。
「スプーン?」
『あ、リエーフくん。そうだ、うん、そうなの!
すごく良い、スプーンとフォークをね、くれたんだよ』
「そこのメーカー、穂波さん知ってた?」
『うん!蛍くんは?』
「僕は谷地さんに画像見せてもらって初めて知ったけど、
無駄がなくて綺麗なフォルムで、でも存在感があって良いなと思った」
『うん!わたしもそう思う♡ みんな本当にありがとう。
お花も、すっごく嬉しい。 涼しげで、素朴で、いろんなグリーンが鮮やかで本当、すき。
一つだけわからないのがあるな…』
「あ!えっとね、花の名前紙に書いてくれたよな!」
「うん、マドリカリア、宿根スイートピー、おきな草、粟、レースフラワー、ブラックベリーだそうです」
『マドリ…』
「マドリカリアです」
『へぇ、この素朴な親しみやすいお花にはそんな名前があるのかぁ。
粟がかわいい。ほんと、嬉しい。ありがとう』
「「「「…///」」」」
お花ってほんと嬉しいなぁ。
お花をもらうと困るって人もいるし、
それをダメとは思わない、その理由も理解できる。
けど、わたしは心から嬉しいって、そう思うんだな。
「花屋は研磨さんに聞きました!」
『え、あ、そうなんだ』
でも前に研磨くんがくれたとことは少し印象が違う。
それから、普通にシールのロゴも、違う。
「前ツトムくんが教えてくれたとこ、2つあって、その一つ。
綺麗だね、その花束も。 親しみやすい感じがすごく、穂波っぽい」
『…ん』