第6章 リレー
ー月島sideー
花は音駒の2年が渡すと聞いていた。
花や食べ物となると話は別だけど、その場だけの勢いのものより
せっかくなら、長く使えるようなもの。
それから予算内で良いものを贈りたかった。
花は、確かに穂波さんに持たせた… 贈りたいけど
僕らは宮城から来るわけだし現実的じゃない。
それに音駒生が贈るならそれでいいと思って。
部活の知り合いからもらうものだ、
場所を取るものではなく、何か小さくて。
穂波さんが望めばアメリカに持っていくことも可能で。
それから、実用的なものがいいと思った。
使って欲しい。
僕を、いや僕たちを、ではあるけれど
それでも僕をふっと思い出すような足跡をこちらからもつけたかった。
いつも、つけられてばかりだから。
西洋ではスプーンは幸せを運ぶものとされているという。
それから穂波さんは、掬うという言葉を時折使う。
救う?と聞いたら、ううん、掬う。と言っていた。
こころにあるものをすっと掬われるような心地がすることがある、とか
まぁあの人なので、抽象的ではあるんだけど
でもその表現が僕は好きだった。彼女らしいし、どこか、わかるような気がした。
──「スプーンとか」
「スプーンですか… いいですね! 赤ちゃんに贈る文化があると聞いたことがあります!」
「いや谷地さん、敬語いいから」
「あっ、いや、ついクセで…」
「2000円ずつ出して、5人で10000円。さすがにスプーンだけでは余るかな?」
「ちょっとリサーチが要るけど…
ティースプーンとデザートフォークをセットで4つとかどうだろう?」
「あぁ、いいね。4つ。来客は少なくない家になりそうだし」
「…月島くんは」
「…なに?」
「…いえ、なんでもありません」
「なに?」
「ひぃぃぃぃぃ ごめんなさいっ なんでもありませんっ
いやそのっ、月島くんの穂波ちゃんへの愛は深いな、と改めて感じたので…」
「はい?ちょっと谷地さん、そういうのやめてくれる?」
「すみません!今後気をつけます!
スプーン、以前母の後輩の方のお宅にお邪魔した際にかっこいいものを見た記憶があります!
かっこいいといっても、変わったものではなく、洗練されたデザインと質の良さを感じるような…」