第16章 釘
ー侑sideー
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6月22日(月)
午前中のフライトやから、
穂波ちゃんが午前中大学に行くときが別れの時。
一昨日、昨日の週末はどっちも午前中から昼過ぎまでカフェのバイトに入っとって。
土曜日はそこに食いにいった。
会いにいった。
昨日は穂波ちゃんのこと見送って、
パッキングしたりしてほんで、ジュース屋で待ち合わせした。
ほんまなんか…なんやろ… 日常感が今日の別れ際までずっとあって。
やからこそ、むっちゃありがたいんやぞ今の状況って思てる自分もおって。
全部の時間大事にできた。
バレーのこともそのための身体作りのことも全部、おろそかにせんと。
正直穂波ちゃんの大学のクラスが終わってから
一緒に空港いっても間に合う時間に変更しよかな、とか前半の時にすぐに思った。
宿代浮くのほんま大きかったから。
でも結果このままにして良かった気がする。
最後まで日常感半端なかった。
ほんでも今日、穂波ちゃんは車に乗って行かんかった。
バスで行くから一緒に乗ってこう。
空港行きのバスには大学の近くのバスターミナルで乗れるからそこまで一緒に行こって、
最後の最後に駄々こねる、ともちゃうけど、
どうにかあがいてみてる穂波ちゃんがほんまにかわいくて、
ええよ、って、余裕ぶっこいた返事ができるほどやった。
そうやんな、置いてかれる方が寂しいんやっていつだって。
『…今度もし、ここに、カリフォルニアに侑くんが来てくれることがあったなら』
「………」
『絶対にフライトの時間相談して、ね?』
「わかった」
『…ん、』
バスターミナルに着いて、さぁほんまにお別れってなった時、
穂波ちゃんは俺に向かい合うように立って、俺を見上げてそう言った。
それから、俺にかがむように促すような抱きしめ方、いうんかな。
背中やなくて、背の高い俺の首の方に腕を伸ばして抱き締めてきた。
ほんで、抱き締めるのやめて俺の顔を両手で包んで、俺のこと見上げてきた。
近い距離でな、それでこう言った。