第16章 釘
ー侑sideー
1週間の集大成、みたいなサーフィンを俺なりにして、
穂波ちゃんも穂波ちゃんで楽しんで。
最後一本ずつ乗ろ、言うていい波くるの待って、乗って、ほんで今。
それぞれサーフボードに座ってゆらゆらと波に揺られながら
サンセットに染まっとる。
ほんま嘘みたいに今日、オレンジや。
この1週間の中でいっちゃん綺麗。
アホみたいに演出してきよる、って思うくらい。
夕日の方みながら、なんでもない話して。
今日は何食べようかなーとか話したりして。
穂波ちゃんの顔も髪の毛も夕日に染まっとって。
ほんまに綺麗。
「なぁ穂波ちゃん」
『…なぁに侑くん』
「これはもう、我慢でけへん。
今日2回目やけど、1回やったら2回も同じとかそういうんちゃう」
『…ん? なんだった?』
夕日の方を向いたまま話を聞いとった穂波ちゃんが、
なんだった?ってこっちを向いた。
瞳も、濡れた髪の毛も、唇も。
全部サンセットに染まって、ほんできらきらしとる。
「近付いてもええ?」
『…ふふ、いいよ、どうしたの?』
「………」
俺の目を真っ直ぐ見つめて、くすくすって笑いながらそう言って。
それからまた視線を夕日の方に戻す。
だんだんオレンジが赤みを帯びていく。
そろそろ身体も冷たくなってくる。
穂波ちゃんがバランス崩してまわんように、
そっと穂波ちゃんのそばにいく。
肩手を穂波ちゃんの板について、
顔を近づけていくとどうしてもバランス崩れてまって、
これはあかんか、俺から一方的にキスしにいくのはここでは無理か…って思ったところで
くっと穂波ちゃんが俺の腕を掴んだ。
掴んで、それを支えにするように顔が近づいてきて、
ほんで、唇が重なる。
サーフボードの上にすわって、って
跨るってことやから、
結構エロいなって姿勢やと思うんやけど、
でもそんな要素は今俺らにとって一つもない。
ほんまに好きの気持ちを確かめ合うみたいな、伝え合うみたいな、
優しくて甘くて永遠みたいな、
やからこそ胸が苦しくなるようなキスになった。