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【ハイキュー】 続・波長 【孤爪研磨】

第16章 釘


ー穂波sideー








初日以降、侑くんはキスをしなくなっていた。

ほっぺやおでこや髪の毛に軽いものは普通にされてたけれど、
唇はもちろん、首とかそういうところには全くしなくって、
そこに侑くんの意志があるのは感じていた。

けど今、すごくすごく優しい、キスをされた。
6日ぶりの侑くんとのキスは、あぁもう全部、
わたしの中に、2人の間にある、と思わされるものがあった。

消えてなくなるなんて思っていないし、
わたしには研磨くんという存在がいるので、
侑くんとキスをしていないことが寂しいとかそういう感情は一切なかった。

けど、キスですごく満たされたのは、
確かな感覚として身体に、心に、脳に、残った。










その前に泣きじゃくってしまったのは、
突然に悲しくなったから。寂しくなったから。

もう、この日々は終わってしまうんだって事実が体感となって押し寄せてきて、
ただただ涙が溢れてきた。

またいつか、こんな時間を過ごせる。
っていう感覚は一切なくって、
何故だか今しかない、今しか起こり得ないことだって確信してる自分がいた。









どう言えば伝わるだろう。

前世の恋人と1週間だけ一緒に過ごせて、
明日からはもう会えない、本当の日常に戻る感じ?

というよりは、この世界がパラレルワールドだったとして。
もう一つの世界線で、本当に愛し合っているわたしと侑くんが、
こっちの世界に来てしまって、この1週間だけ恋人同士として過ごせた、みたいな。
明日からはまた、今まで通り… でも元の世界にいた時からしたら今まで通りじゃない、
けどこの世界では今まで通りの、わたしはわたしとして。
侑くんは侑くんとして、過ごすことが決まってる、みたいな。




伝える気ある?ってくらいぶっ飛んだ例えしか浮かばないけど、
感覚としてはそれが一番しっくりする気がする。




一生の恋人になり得た人と、もう、一生恋人にはなり得ない岐路にいる、みたいな。
研磨くんがどうとかでは一切なくて、ただただ、そんな感じだったんだ。











そんな気持ちを満たしてくれたのは、侑くんの優しいキス。
きっとそれ以外にこの気持ちを埋める術はなかったような気がするほど
侑くんの優しさに溢れたものだった。

全てが、そこに、あった。











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