第16章 釘
ー穂波sideー
侑くんが無邪気に、
うまいうまいとむしゃむしゃと食べてくれるものだから、
わたしの顔は終始綻びっぱなし。
身体を作るものを作らせてもらえる、
食べてもらえるって、
本当にありがたくって幸せだ。
それを美味しいと言ってもらえたならもう。
『…ねぇ、侑くん』
「んー、なにー? あ、俺食べ過ぎ!?」
『ううん、いっぱい食べて? 無理しない程度に』
「ほんまー? ええのー?」
『うん、もちろん。 …それでね、侑くん』
「あ!そや、この後やりたいことあるって言ってやんな!
ごめんな、急いで食べるわ!」
『ううん、いそがないで、普通に食べて。時間のことは気にしないで』
「ほんま? ならそうする!急いで食べるん勿体無い!」
『…うん、でね、侑くん』
もりもりもり、とサラダを頬張るかわいい侑くん。
目がテーブルの上のお皿に向いてキョロキョロしてて。
あぁかわいい。
「うん、なに、穂波ちゃん」
ごもごもと、返事を返す。
そのかわいさに思わずクスッと笑みがこぼれる。
『明日も、うちに泊まってかない? …というか、1週間でもいいんだけど』
「は?」
『あ、いやもちろんね、ホテルがなんだろう、
侑くんの今回の滞在のイメージに不可欠だったらホテルに泊まってもらえばいいし…』
「………」
『…キャンセル料も発生するし』
「………」
『それ踏まえても費用は抑えられる気がするけどでも… あぁやっぱ何でもない』
「………」
『………』
「なんで?」
『…うん?』
「なんで泊まっていけばって思ったん?」
『…んと、それは』
一人でわちゃわちゃとして、
勝手に完結させようとしてみていたけど。
話を頭に戻された。
確かに、突然だったし気になるよね。
あばあばしてる心の中の模様、全部言葉になって出ちゃってたし。