第16章 釘
ー侑sideー
お利口さん、やって。
待ってることをお利口さん言われると
なんかあとでご褒美あるみたいやなって思って。
エロいなぁって思った。
穂波ちゃんは多分軽いノリで、
なんも考えんと俺の真似したって感じなんやろうけど。
穂波ちゃんが料理しとるとこ、初めて見る。
日本におった頃は何度か手作りの惣菜とかお菓子を送ってくれとったから、
サムに全部委ねる形にはなっとったけど、
穂波ちゃんの作ったもんは色々食べたことはある。
研磨くんと穂波ちゃん家行った時は、
サムと福永くんが料理振るまっとったしな。
穂波ちゃんの送迎会やったし。
手際よく、ほんま普段からずっと立ってんねやろなって動きでそこにおる。
サムもそうやけどまたやっぱ、性格とかがあるんか違うとこもある。
でも2人でそこに立っとる絵が浮かんでくるんも確かで、なんや腹たってくる。
「あーやめよやめよ。サムのことは今考えたらあかん」
『…笑 なになに? 治くん?』
「えーの!」
『…ふふ、もうすぐできるよ。 侑くんにお願いしてもいい?』
「ぉん!なに?」
そこにあるカトラリーを机に出してくれんか、
ランチョンマットはそっちに入っとるでそれもよかったら。
水のグラスとあとピッチャーに水足すのもお願い。
って。
今この状況って、
突然の来客で、腹へっとって、
次にやりたいこともあってって感じ。
そんな時になんもかんも我慢して自分でやってまうんじゃなくて、
こうやってさらっと頼み事してくれるん、めっちゃええなって思った。
好きにしかなっていけへん、どうしたらええの。
『わー、ありがとう。助かりました♡』
「めっちゃうまそう!」
『侑くん熱いうちに、なんだけど一つ忘れ物してる』
「…え、なんやっけ …あ、お土産!?ホテルに忘れてきてもーた!」
『違う違う。 何か約束したはず。 前に日本で会った時、別れ際に』
「………」
…あ、わかった!
わかったところで…
いやいやいや、それ催促するのとか可愛すぎるんやけど……