第16章 釘
ー侑sideー
今、イったん?
演技とかゼロで、ものすごい静かに、身体ふるわせて。
今はくったり、寝転がっとる。
俺のキスで腰抜かして、俺のキスでイったん?
やば… 何この子。 挿れたい。
だってもう、ギンギンどころやないし。
けども。
なんでやろな、なんかちゃう気がしてまって。
100%いけたはずやけどな、できんかった。せんかった。
代わりに普段隠れとるとこ、
やけど水着着てると見えるとこにキスマークをつけた。
欲しいやん、証みたいなの。
「…エロいな、またシャワー浴びなあかんくらい濡れてんのとちゃうん」
『………』
「一人だけ気持ちよぉなって、どうしてくれんの?」
『…シてほしい?』
「…なにを?」
『口で…』
して欲しいか言われたら誰だってして欲しいやろ。
好きな女の子やで?
けどあかんねん、決定的なことはやっぱあかん気がしてまう。
「して欲しい。むっちゃして欲しいし、ぶち込んで喉の奥突くのもやりたい。
精子飲ませたいし顔にかけたいし、泣いとる顔すら見たい」
『………』
「でもせーへんよ。どないしたん穂波ちゃん。
研磨くんと俺以外の男にもそんな顔や姿みせてんの?」
『…わかんない』
「…わ、わかんないってどーゆーこと!?」
『こんなの初めて。 でも、そうやって聞かれるとわかんない』
「………」
『…ごめんね、変なこと言った』
「そやな、口でしてほしいかなんて言ったらあかん」
『………』
「どの口が言うてんのや言う感じやけどな」
『…ううん、そんなこと思わない』
ちょっとシュンとしてるんかな、
ちょっとやばいって思ってんのかな。
やってもた、やないけど。
「電気つける前に、一個聞くで? 穂波ちゃん大丈夫?」
『…全然。 全然大丈夫じゃない』
「………」
『侑くんエッチすぎて、全然、大丈夫じゃない』
「え、そっち… そっちなん?」
研磨くんのこととか考えて、大丈夫じゃない、とちゃうんや。
なんかよぉわからんけど、一歩進めそうかも思ったら、
進んだかも、思ったら途端に今までみたいな時間ややりとりが恋しなる。
…しょぼいんやろか、チキンやろか。
でもしゃあないやん。