第16章 釘
「…集中しな、あげへんよ?」
じゅるるるっと音を立てながら太ももに柔く吸い付き、侑くんはそう言った。
『…な にを、くれるの?』
「…何が欲しいん?」
『…快楽』
「……ちょ、こら!」
色気がマックスどころじゃなかった侑くんから、
いつもの?やいやい言ってる侑くんが顔を出す。
「今は俺が欲しい言うとこやろ」
『…同じような意味かと』
「いやちゃうね、俺→快楽の順番か、快楽→俺の順番か」
『…そんなこともうどうでもいいよ』
「…どうでもよくないわ!身体目当てかいな!」
『…笑 ちがう、けど』
違わない、のかも。
「…別にええけど、その気になれば骨抜きにできるのわかったし」
『………』
「俺なしではおれん身体にも開発できる、絶対。 …な、穂波ちゃんもそう思うやろ?」
『………』
確かにそれは、否めないな。
「…ま、ええわ。なんかムード消えてまったけど、一つ目的は果たす」
『………』
「ええ?」
『…え、なに……』
「ま、あかんって言ってもするけどな。今の穂波ちゃんちょろいし」
被せるように、言い捨てる。
侑くんの暖かさと冷たさ。
かわいらしさと怖さ。
そういうギャップにいつの間にかわたしは翻弄されている。
舌先がつーっと足の付け根に向けて這っていく。
もう、すぐそこには濡れて快楽を待っている秘部があって。
頭では蹴り飛ばしてでも抗うとこなのかもしれないよな、と考えながらも
こころはなぜだか一つも嫌がってない、
そして身体はわかりやすいほどに期待してる。
そんなことを今この状況で、バカみたいに思いふけっている自分がいる。
『…いっ んぁ……』
左脚の付け根より少しだけ下の辺り。脚の外側。
太もものだいぶ上の方に甘く鋭い痛みが走る。
「暗くてみえん。 もっかいいくで」
『…あ……』
痛みが、快感へとつながっていく。
キスマークもキスとみなされるのであれば、
わたしは侑くんのキスだけで、ベッドの上で達してしまった。