第13章 新たな風
ー及川side
そっか
やっぱメガネ君と付き合ってるんだ…
まぁそれは想定内だったけど…
案外すんなり引き下がった俺に、ほっとした様子の歩ちゃん
駅に着くと彼女は
「じゃあ…及川さん、お元気で…
と別れの挨拶をしようとする
それを遮るように
「俺が呼び出したんだし、そっちまで送っていくよ」
と言って、一緒に改札に入った
「え、悪いです。まだそんなに遅くないし大丈夫ですよ」
「男心の分かんない子だね、最後なんだからもう少し付き合ってよ」
肘で彼女を突っつきながら、おどけてみせる
「…じゃあ、お言葉に甘えて…」
そう言って彼女は微笑み、俺たちは一緒に電車に乗った
目的地までの電車の中で、お互いのことを沢山話した
彼女が三姉妹の長女だって話とか、兵庫に住んでた時の話
初めて聞くことばっかりで、あー俺って君のこと何にも知らなかったんだなって思った
トンネルに差し掛かり、2人の姿がドアに映る
どう見ても恋人同士にしか見えなくて胸が痛んだ
「…かわさん、及川さんっ!聞いてます?降りますよ?」
腕をぐいと引っ張られて、2人で電車からホームに降り立った
「駅前のショッピングモールの中にサーティーワンが入ってるんですけど、アイス食べながら帰りませんか?」
「お、いいね」
「送ってもらったお礼と…海外渡航の餞別も兼ねてご馳走します」
「餞別がサーティワンかぁ」
「あ、ショボイって思った?!仕方ないでしょ?!バイトもしてない高校生なんですから」
と膨れる素振りをする歩ちゃん
ショボイなんて思ってないよ
君から貰えるのものは何だって嬉しいんだから
「及川さん何にしますか?」
「んー、ポッピングシャワー」
「え?!」
「なによ?」
「いや、攻めるなーと思って」
「そう?そーいう歩ちゃんは?」
「私はチョコミント一択ですね」
「チョコミントこそ攻め攻めじゃん」
「え?!そんなことないでしょ」
「でも好き嫌い分かれるじゃん」
「あー確かに、アリ派とナシ派に分かれますね。ちなみに?」
「俺はナシ」
2人でケラケラと笑いながらショッピングモールを出る
アイスの好みひとつで、こんなに盛り上がれる相手はそうそう見つからないよなぁ