第13章 新たな風
ー歩side
「今日の俺、かっこよかった?」
及川さんはいつもの調子で言う
「自分で言うんですね(笑)でも…バレーしてる及川さんは素敵だと思いますよ」
本心だった
あえて軽く振る舞ってんのは何でか分からんけど、華やかな外見からは想像もつかない程、この人は誰より真面目で泥臭い
そしてそんなプレーをする及川さんは素敵だと思う
今日特に子供たちに熱心に指導してるとことか、慕われてるとこを見て、より魅力的だと感じたのは事実だった
「あーあ、残念だね」
「…なにがですか?」
「だって同じ学校のキャプテンとマネージャーだったら、絶対俺のこと好きになったのにね」
「ははっ…どうですかね」
案外ない話でもなかったのかもしれない
毎日及川さんと一緒にいたら…
彼のことを好きになっただろうか…
「ねぇ…最後だし…真剣な話聞いてくれる?」
真剣な眼差しを向けられ、私は及川さんの方に向き直り
「はい」
と答えた
「何でだったかきっかけは分かんない。最初は面白い子だとか、単純に外見が好みだっただけかもしれない。でも君は今まで出会った、どんな女の子とも違った」
「…そうですか」
「俺は必死な部分とかをあまり人に見られるのが嫌で、多分…本当の自分じゃない自分を演じながら生きてきたんだと思う」
いつになく真剣な表情の及川さん、これが彼の本当の姿なんだろう
「ベストセッター賞獲って、試合とか観に来てくれる女の子たちが増えてからは特に…明るくて楽しくて、努力しなくてもバレーの天才及川徹!でいなきゃいけないって思ってた。でもね…」
「…でもね?」
「そういう俺の外面だけを見て付き合う子は大体、本当の俺を知るとゲンメツするんだ。天才でも何でもなくて、死ぬほど努力してるとことか…小さい時から岩ちゃんとバレーに明け暮れてたから、特に遊び慣れたりしてるわけじゃないとことか…」
「え?なんでですか?」
「なんでって…イメージと違ったんじゃないの」
「私はそういう及川さんの方がいいと思うのに。本当は誰よりもチームのために献身的で努力を惜しまない所とか、青城は進学校やから部活やりながら、ちゃんと勉強もしてたと思うけど、それを軽くやってるように見せられるなんて…それこそカッコいいじゃないですか」