第13章 新たな風
洗濯のカゴを保護者…というか姉貴に渡した歩ちゃんが小走りで戻ってきた
「及川さーーーーん!」
「あ、歩ちゃんお疲れ」
「お疲れ、じゃないですよ?!何でもっと早く言うてくれんかったんですか?!」
「ん?なにを」
「なにって…アルゼンチンですよ!そんなん聞いてません!」
「言ってないもん…てか、もし俺が電話でもうすぐ日本からいなくなるから、会ってほしいって言ったら会ってくれたの?」
「…それは…」
「ほらね?こんな風なやり方で呼び出して悪かったよ、でも…願いは一つ叶ったから俺は満足してる」
「願い…?」
「歩ちゃんにマネージャーしてほしいなって思ってた。歩ちゃんが青城に来てたら、俺たちのチームのマネージャーだったら、どんな毎日だっただろうって」
「及川さん…」
「さ、そろそろ体育館も閉まるから出ようか」
微妙な空気を断ち切るように言うと、俺たちはコーチに挨拶をして体育館を後にした
体育館から駅までの道はランニングコースになっていて、整備された歩行者用の道路があり、途中には休憩用のベンチなんかも置いてある
「ここ、よく走ってるんだ」
「そうなんですね」
「で、そこのベンチで休憩してから帰るのがルーティン」
そう言いながら、いつものランニング帰りのようにベンチにドサッと腰を下ろす
その様子を見ていた歩ちゃんも、少し離れてベンチに座った
「今日の俺、かっこよかった?」
「自分で言うんですね(笑)でも…バレーしてる及川さんは素敵だと思いますよ」
「あーあ、残念だね」
「…なにがですか?」
「だって同じ学校のキャプテンとマネージャーだったら、絶対俺のこと好きになったのにね」
「ははっ…どうですかね」
歩ちゃんはイタズラっぽく笑う
「ねぇ…最後だし…真剣な話聞いてくれる?」
俺がそう言うと彼女は真剣な眼差しでこちらに向き直った
「はい」