第13章 新たな風
ビブスが入ったカゴを持ってキョロキョロとしていると、子供たちを迎えに来た親御さんたちが目に入った
コーチに挨拶をしたり他の保護者の方たちと話したりして、体育館のロビーは混雑していた
どの親御さんが当番なんやろう
辺りを見回していると、そこにサングラスを掛けた長身の女性が現れ、真っ直ぐ私の方に向かって歩いてきた
私より背が高いってことは170cmは超えてる
私の前に立ち止まった女性はスッとサングラスを外した
その素顔は驚くほどの美人で、私に何の用…
「それ、ちょーだい」
「え?」
「そのカゴ」
彼女は私に向かって手を差し出す
「あっ、これ?!もしかして当番の保護者さんですか?」
「そう、及川猛の母です」
!!!!
まずもってこんなモデル系美女に小学生の息子がいることに衝撃を受ける
とても子供を捻り出したと思えんプロポーション
そして及川猛…って及川さんの甥っ子の猛くんのことやんな、てことはこの人は
「お、及川さんのお姉さんですか?!」
「そ、いつも猛の送り迎えは徹にしてもらってるんだけど、今日は洗濯の当番だから車で来いって徹に言われてね」
そう言うと彼女は私の手からカゴを受け取った
胸元にサングラス、そして細身のパンツ姿のお姉さんと洗濯カゴのミスマッチさ…
「で、あなたは?」
「わ、私ですか?!私は歩…橘 歩です」
「ふーん…徹の新しい彼女?」
「え、いえ?!違います違います、私はただのお手伝いで」
「そうなんだ、てっきり私はあなたが徹の心残りなんだと思っちゃった」
…こころのこり?
不思議そうな顔をする私にお姉さんは
「え…もしかして聞いてないの?」
と訊ねる
「何をですか?」
「あの子、もうすぐ海外に行くのよ」
え?
「あの子…って及川さんですか?海外って…どこの…」
「アルゼンチン」
「アルゼンチン?!真裏じゃないですか!」
「そうよ、でもあの子まだ日本に心残りがあるって言うから…多分あなたのことだと思う」
「私…?私なんて何も…」
「歩、徹はイイ男だよ」
「…はい…それは」
「ちゃんと考えてやって」
お姉さんは私の肩をポンポンと叩くと、猛くんを連れて帰っていった