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FLYHIGH(ハイキュー)

第13章 新たな風


「デニーロ?」

「矢巾さんです、ロバートデニーロみたいな顔でウチの潔子さんに近づいてきたんで」

「潔子さん…ああ、烏野のメガネの美人マネちゃんね」

なんて2人で話してる途中も、時折及川さんは寂しげな顔をする

どうしたんやろう、らしくない



私たちは子供たちの試合を見守りながら、得点ボードを捲る

子供たちに向ける及川さんの眼差しもどことなく寂しそうで…別に忙しくたって遠くに行くわけでもないし、そんなに子供たちと離れがたいんやろうか

間もなく紅白戦が終わった

及川さんは残りの子供たちをコーチに任せ、ある1人の男の子を呼び出した

その子は赤チームのセッターをしていた小柄な男の子、名前は確かカイ君…と言ったかな

サラサラの髪は少し色素が薄く、どことなく蛍に似ている

蛍が小学生の頃はこんなんやったんかな…小さい蛍がバレーボールしている姿を妄想して、ニヤつく


カイ君は私の目から見ても分かるくらい、少しレベルが飛び抜けていてる
まだ成長途中の小柄な身体やけど、テクニックは他の子とは比べ物にならないくらいだった

それを及川さんも見抜いていて、また同じセッターということもあり、目にかけているのだろう

個別に細かい部分を指導してあげている

こうやって素晴らしい選手が指導して、また素晴らしい選手が誕生すると思うと感慨深いものがあった


及川さんとの個別レッスンを終えたカイ君が水飲み場に向かう

タオルを持ってその後ろを追いかけていった


「お疲れさま、すごい汗だね」

話しかけると、水で頭を濡らしていたカイ君がこちらを向く

濡れたカイ君の髪を、持っていたタオルでわしゃわしゃとする

と、その腕をパッと掴まれた

存外その力が強くて驚く

「…子供扱いすんな」

「え、あ、ごめん?」

「…あんたさ、名前なんて言うの?」

「私?歩だけど」

そう言えば今日はずっと、お姉ちゃんって呼ばれてたから名乗ってなかったか

「…歩」

「どうしたんカイ君」

名前を呼ぶと、何故か彼は顔を赤らめて

「…なんで、俺の名前…」

「マネージャーやもん、選手の名前と学年覚えんの当たり前やろ?水瀬 海くん、小学5年生」

ドヤりながら言うと

「…歩は本当にトールの彼女じゃないんだよね?」

「うん、違うよ」

「良かった」

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