第8章 それぞれの春高まで
ー歩side
黒尾さんに引っ張られて、ネックレスのチャームが襟の外に飛び出る
別に隠してたわけではないけど、見つかったら見つかったで誰にもらっただの、誰と付き合ってるだのって話になるのが目に見えてたから
ツッキーと微妙な関係である以上、若干説明が面倒くさいと思ってたのは事実
「なにこれ…ネックレス…月…月のネックレス…ツッキー!?」
驚いたように黒尾さんが言う
「え、橘、それツッキーに貰ったの?!どういうこと?!2人は付き合ってんの?!」
リエーフ君が興味津々と言った感じで聞いてくる
「レーヴォチカ、ツッキーって誰?」
アリサさんも興味津々
「ツッキーは烏野、橘と同じ高校のバレー部で、俺と同じミドルブロッカーだよ、背番号も同じだし、身長も高いし、まぁ俺のライバルと言っても過言…」
「過言だよ。リエーフは月島どころか翔陽にも及ばないし」
研磨さんが鋭くツッコむ
「てかあいつ…よくも師匠の俺を差し置いて」
黒尾さんが舌打ちをする
「だーっクソ!歩と同じ学校じゃなかったがために、月島なんかに!おい!研磨!お前なに涼しい顔してんだよ?!月島に俺らの歩盗られたんだぞ!?」
夜久さんが立ち上がって研磨さんに詰め寄る
「なんで?別に…どうでもいいじゃん」
研磨さんがボソッと言うと、ヒートアップしていた場が静まり返る
「だって、人のモノだからって好きになっちゃいけないとか奪っちゃいけないって法律なんてないでしょ
…ね、歩?」
ベンチの上で三角座りをした研磨さんが顔だけこちらに向ける
全く何を考えてるか分からない瞳に、射るように見つめられてゾクっとする
「こら研磨、物騒なこと言ってんじゃないよ、歩チャンが困ってんでしょーが」
黒尾さんが言いながら私の頭をツンツンと突っつく
「そろそろお寺の方にお参りしようか」
海さんがそう言ってベンチから立ち上がり
私たちはみんなそれに続いて立ち上がる
びっくりした
黒尾さんと海さんが助けてくれんかったら、何て答えたらいいか分からんかった
研磨さん
チラッと横目で見る
白い肌とプリンヘアに和服のミスマッチ感が逆に魅力的で、変に意識してしまう