第8章 それぞれの春高まで
ー研磨side
「お待たせ〜」
リエーフのお姉さんの声がして顔を上げたけど、直視できずにもう一度下を向いた
歩の着物姿の破壊力が凄まじすぎて…
本当は俺だって和装なんて目立つこと、やりたくなかったけど
歩が前に言ってた言葉を思い出して
『男だけで行きにくい所あったら言ってください』
って…
多分歩と一緒じゃなきゃ、一生やらないこと
それを一緒にするのは、まぁ悪くないかもって思うし
単純に歩の着物姿を見たいって気持ちが勝ったわけで…
てか最初俺は別に、俺たちは着なくてよくない?って言ったんだけど…
ー数日前
「え!どうせなら俺たちも着ようぜ!そんな機会ねぇじゃん」
「確かに!俺もきてみたいっス!俺なんて特にみんなと行かなきゃ外国人観光だと思われますからね」
夜久さんの提案にリエーフはノリノリで答える
「えー…和服なんて目立つじゃん…やだよ」
「何でだよ!さっき浅草で歩と着物デートの話してた時は、ウンウン頷いてたじゃねーか!」
夜久さんが立ち上がってキレてくる
「いや…歩の着物は見たいけど、それ俺たちも着る必要ある?」
「分かってねぇな〜研磨は」
クロがドヤりながら言う
「…なに?」
「普段違う姿にドキッとすんのは何も男だけじゃないわけよ?歩だって、ほぼジャージ姿の俺らしか見てないわけだから、ここで和服姿なんて見た日にゃ、きゃー黒尾先輩カッコいい〜ってなるじゃない?」
クロの妄想が暴走してんのは置いといて…
まぁ確かに一理あるよね
てな感じで俺たちも一緒に和装することになったわけなんだけど
「海さんは…なんか…別の意味で凄く似合ってますね」
リエーフが言うと、歩が
「確かに!元から浅草で商売やってるみたいな雰囲気出てますね」
と笑う
あー…クソ…
なんかドキドキする
「ここからまず雷門入って、仲見世通りで食べ歩きしながら、お寺の方に向かおうぜ」
クロが言うと、みんなが立ち上がってゾロゾロと歩き出す
「食べ歩き楽しみっ!あ!研磨さーんっ」