第8章 それぞれの春高まで
アリサさんが選んだ着物は薄紫の生地に大胆な大柄の花がプリントされたものだった
身長があるから、大柄の花が映えてよく似合う
その上にクリーム色の羽織を羽織って髪の毛はラプンツェルのようにゆるい三つ編みに花が散らされている
女でも見惚れてしまいそうな姿に、若干隣を歩くのに引け目を感じる
人種の差が恨めしい
私はボルドーの生地に大小のドットが散りばめられた、所謂和モダン的な着物をアリサさんに選んでもらって、その上に濃い紫に模様があるような丈長の羽織を合わせた
さっきまで首元にボリュームがあるセーターを着てたから見えてなかったけど、着物を着るとネックレスのチェーンが少し覗く
外すのもおかしいしな…
「歩ちゃんこそ、すごくよく似合ってる!色白だから濃い色が引き立つね!これはあの子達、正気じゃいられないでしょうね」
「いやいや、私ごときで正気を保てないようでは、アリサさんのこと見ることも出来ませんから」
2人でお互いを絶賛し合いながら、店の外に出る
あ…そうなん
びっくりした
みんなも着るんや!
そこには和服姿の音駒メンバー
和服男が5人も揃うと圧巻
て言うより研磨さんが嫌がらずに着たことが衝撃やし、いつもはバサっと無造作にしてある長髪を少し後ろで束ねてるのが…イイ!
あ、なんかスガさんの時も思ったけど、私和服の男の人、ちょっと萌えてしまうかも…
しかも5人
正気を保てるか怪しいのは実は私なんちゃうか
「お待たせ〜」
アリサさんが小走りでみんなに近づく
「おう、遅ぇよって言おうと思ったけど案外早かったな」
夜久さんが石垣に腰掛けながら言う
「なんか私ら背高すぎて、選べる着物めっちゃ少なかったんです。アリサさんなんか5枚…
「歩、てめぇ身長自慢すんな!」
「うぇ!?してませんよ!」
「あはは、コイツね逆に小柄で種類少なかったから拗ねてんのよ」
海さんが解説すると夜久さんはチッと舌打ちする
「え、でもめちゃめちゃ似合ってますよ?私服の時も思いましたけど、夜久さんオシャレですよね」
「え、あ、そう?」
急に褒めたから、夜久さんが口籠る
でも本当やもん
濃い紫の着物にベージュを基調とした縞模様の帯、同じくベージュの羽織、足元は色付きの足袋に雪駄
レンタルに見えないほどしっくりきてる