第8章 それぞれの春高まで
「じゃ、いきますか」
黒尾さんが言って、みんながゾロゾロ歩き出す
「で、どこ行くんですか?」
早足で黒尾さんについて行きながら訊く
「んー、浅草?」
「浅草…渋いですね」
「どうせ、おのぼりカラスちゃんは雷門とか見たことないだろーなって思って」
「あ、めっちゃバカにされてる!確かに宮城はヤバいぐらい田舎ですけど、その前は一応まぁまぁ都会に住んでましたからね!私は鉄塔と東京タワーの区別ぐらいつきます」
「あはは、あったね〜そんなこと」
海さんが笑う
「遊園地とかも考えたけど…年末だし、歩も時間的に厳しいかなと思って」
研磨さんが私の横に並んで、ボソっと言う
「そうですね…てかみんなでどこ行くか考えてくれてたんですか?!」
「ちゃんと調べるからって言ったじゃん」
そう言えば研磨さん、そんなこと言ってた気がする
「もー、毎日コンビニの前のベンチで会議だよ!このクソ寒い中な!歩をどこに連れてくかって」
夜久さんがヒョコっと顔を出しながら言う
夜久さんの私服はオシャレだ
みんな大体がパーカーにダウンにGパンって感じの中、一人だけコートですこし丈を折り返したパンツから靴下が覗いていて、足元はゴツめの白いスニーカーを履いてる
「てか、みんなで会議してたんやったら早く誘ってくださいよ!黒尾さん連絡してきたん昨日ですよ?!」
「え?!そうなの?!クロ、てめぇ歩への連絡は俺に任せといてとか言っときながら、コイツ今日予定あったらどうするつもりだったんだよ?!」
「は?歩はどんな予定があっても俺ら優先してくれるって分かってたし?そんなに言うなら夜っ久んが自分で歩に連絡すればいいじゃん?ってあー、連絡先知らなかった?ごめんごめーん」
「てんめぇ!表出ろ!」
「表ってどこですか?電車飛び降りるなんて芸当、どこぞのスーパーリベロじゃないんだから、俺にはちょっと…
「はーい!ストップストップ!電車の中で喧嘩しないの!」
一応周りの迷惑を考えながら、小声で言い争ってた黒尾さんと夜久さんの間に、海さんが入って仲裁する
きっと音駒のみんなって普段こんな感じなんやろなっていうのが垣間見えてほっこりする