第8章 それぞれの春高まで
食い気味に翔陽にツッこむ
「いや〜ほんと橘のは悩んだけど、これだ」
田中さんはそう言いながらスッとTシャツを差し出す
色は薄い茶色
私はパーカーとジャージを脱いで、黒いロンT1枚になり、その上からTシャツを着る
恐る恐る胸元を見ると…
肉食動物
え?
私が胸元を眺めたまま固まってると
「やっぱお前と月島はペアかなって思って!しかも月島が草食で橘が肉食とかピッタリだろ?!思いついた時、ノヤっさんとハイタッチしたぜ」
「龍、お前は天才だぜ!」
「いや、ツッキーとペアってゆーか、もはや山口くんとトリオやん!」
肉食動物、草食動物、軟体動物
なんなんこれ?!
「あはは、橘さん、よく似合ってるよ?ねぇツッキー」
山口くんが苦笑いしながら言う
「…僕がブラキオサウルスで歩はティラノサウルスか…悪くないな」
ツッキーは何かブツブツ言ってる
「そうだ、集合写真撮るために武田先生にカメラ借りたんだった!ツッキー、橘さん、コッチ向いてもっと、こうTシャツの字をちゃんと見せて!」
山口くんに言われて、Tシャツの裾を引っ張る
「フフッ…似合ってるよ肉食動物」
ツッキーがニヤニヤしながら言ってくる
「全然褒められてる気せーへんけど」
抗議しながらツッキーの方を見た瞬間、カシャっとシャッターが切られる
「ちょ、山口くん!」
「いや〜結構いい写真撮れたよ!」
山口くんが満足そうに、今撮影した写真を画面に表示させる
画面の中の私たちは、お揃いのTシャツを着ながら見つめ合ってるように見える
「ほぅ…お前らは2人とも黙ってたら美男美女だからなぁ、雑誌のモデルみたいだな」
画面を覗き込みながら、感心したように大地さんが言う
「いや、こんな変なTシャツ着てるモデルとかいませんから!」
「歩、あんま褒めんな」
ノヤさんがドヤ顔で鼻の下を擦る
「褒めてませんから!」
体育館が爆笑で包まれる
「ちゃんと俺らも着てきたぞ」
烏養コーチと武田先生がジャージを脱ぐと、それぞれ
温故知新 焼肉定食
焼肉定食てなんや
「それより…潔子さんは?」
私が訊くと、潔子さんは恥ずかしそうにしながら
「…もう…今日だけだからね」
と、ファスナーを下す