第8章 それぞれの春高まで
ー歩side
結局あの日は、あれからも妹たちの尋問にあって、布団に入ったのは日付を跨いでからだった
無くしたら困るから練習中はネックレスを外していく
ツッキーとなるべく普通にしたいけど、恥ずかしくてちょっと直視できひん
そんな風にしていよいよ年内最後の練習日
「お疲れした〜」
「じゃあ俺から一言、今年1年本当によく頑張った。年が明ければいよいよ東京オレンジコートだ。俺は、普段通りにやればお前たちは充分全国で通じると思う。ゆっくり身体を休めて、美味いモノを食うのも重要なことだ。年末年始はゆっくり休んで、また2日に会おう」
烏養コーチが締め括りの挨拶をして解散となった
「そーいや、お前ら昨日部室で言ってたもん、ちゃんと持ってきたか?」
ノヤさんがよく通る声でみんなに言う
私たちは部室にいないから何のことか分からず、やっちゃんと顔を見合わせる
「はい!もちろん持ってきました!」
翔陽が嬉しそうに、袋から何か取り出すと、その場で着ていたTシャツを脱ぎ捨てる
?
そして袋から取り出したエメラルドグリーンのTシャツをスポッと被って、私とやっちゃんの方を向く
「これって…」
「へへへ、そう!大器晩成Tシャツ!」
翔陽の着替えを皮切りに、みんなも次々と四字熟語が書いたTシャツに着替え出す
最後にめっちゃ嫌そうな顔しながら渋々ツッキーも
「もしかして…今日私らのも貰えるんですか?!」
「おう橘、お前のはマジで悩んだぞ」
「一騎当千と風林火山の二択まで絞ったんだけどよ」
田中さんとノヤさんが腕組みしながら言う
「いや、おかしいでしょ」
「先にやっちゃんな!はい!」
「あっありがとうござしゃすっ!」
やっちゃんがジャージを脱いで、ロンTの上からスポッとシャツを被る
深緑のTシャツに白字で
村人B
「やっぱり!!」
胸の字を見てやっちゃんが言う
「いやでもな、村人Bってモブっぽいって思うかもしんねぇけど、自ら村人BのTシャツを着出したら、それはもう格が違う村人Bだ」
「言うなればレジェンド村人B」
ノヤさんと田中さんは良いこと言った風になってドヤってるけど、ちょっと意味がわからん
「何てったって谷地さんは、東北一の村人Bだもんな!それに歩は関西一の…」
「だからそれやめて」