第8章 それぞれの春高まで
ー月島side
やっぱりあの日、歩と菅原さんは一緒にいた
この靴も2人で選んだと思うと、いい気はしない
似合ってるから余計むかつく
「あ、そやクリスマスプレゼントで思い出した!私ツッキーにプレゼントあるねん」
「そうなの?」
彼女はカバンの中をゴソゴソとしてラッピングされた小さな包みを差し出す
「ありがとう…開けていい?」
「うん、悩みすぎてよく分からんようになったから大したものじゃないけど…」
嬉しい
歩が僕のために選んでくれたモノ
包みを開けると
「これ何?栞?」
「あ、うん…ブックマーカー」
金属で出来たブックマーカーの先端にチャームがついている
Kという僕のイニシャル入りの…
「これ結構使いやすいの、こう外側にチャームを垂らして」
「歩も持ってるの?」
「あ…オソロイで…買っちゃったけど…引いた?」
歩は恥ずかしそうに言う
「全然、嬉しい」
本当嬉しい
さっきまで嫉妬でモヤモヤしてた気持ちが一瞬で消し飛ぶんだから歩はズルい
「実は僕も」
そう言って用意していた包装された箱を歩に手渡す
「え、ありがとう…開けていい?」
ピリピリと丁寧に包装紙を破って、彼女が箱の中身を取り出す
「これ…」
彼女の誕生石をあしらった月の形のネックレス
「めっちゃ可愛い、これほんまに貰っていいの?」
「つける?」
「うん!つけてつけて!」
歩は巻いていたマフラーを外して、少し伸びた後ろ髪を両手で持ち上げる
急に現れた細くて白いうなじにドキッとする
「歩、髪伸びたね」
「そやなぁ〜、また切ろうかな?どう思う?」
「どっちでもいいんじゃない」
「うわ、めっちゃ興味なさそう」
「だって…どっちでも似合ってるし」
ネックレスをつけながら耳元で言うと、歩の耳がピンクに染まる
「はい、できた」
「ありがとうっ!どう?似合ってる?」
振り向いた彼女の胸元で月のモチーフが輝く
「うん」
「めっちゃ嬉しい、大事にするなっ」
満面の笑みで歩が言う
ああ、この笑顔
誰にも渡したくない
歩は僕のモノだ