第8章 それぞれの春高まで
2人でいくつか店を回った
「あ、これどうですか?」
彼女が棚から手袋を手に取る
毎日マネージャーの仕事で水に触るからか、指先が赤切れているのが目に入る
「ランニングするのに冬場良さそうじゃないですか?」
「あーいいんじゃない?」
「しかもこれ、指先だけ特殊繊維でスマホ触れるらしいですよ!」
「えー!めっちゃいいじゃん!音楽聴きながらランニングすんのに、結構スマホ触るからさ、俺が欲しいわ」
「あ、じゃあこれにします!それに東北の冬マジ寒いですからね」
「んじゃ、俺は同じメーカーの靴下にするかな!クリスマスと言えば靴下だしな」
俺たちは会計とラッピングを済ませて店を出る
「飲まず食わずで買い物してたから喉乾いたね?」
「そうですね、お茶して帰りましょうか?その前にお手洗い行ってきますね」
一旦彼女と別れて俺は急いである物を買って、ショッピングモール内のカフェで合流した
「今日はありがとうございました」
「ううん、普通に楽しかったし」
「スガさんって人にモノ勧めるんうまいですよね?求めてる答えをくれるというか…教師とか教祖とか向いてそうですね」
「後者おかしいだろ」
と言いつつ、自分の進路を当てられてドキリとする
「俺さ…教育学部受けようと思ってるんだ」
「そうですか、春高終わったらすぐ受験ですもんね」
「うん」
「スガさんならきっと、いい先生になるでしょうね」
君の言葉には嘘がないって知ってるから
だから素直に嬉しい
「歩ちゃんは?」
「へ?」
「進路とか…何かなりたいものとかあるの?」
「んー…まだ1年ですからね」
「そうだね、俺も1年の時なんて進路とか全然考えてなかったな
…でもね
あっという間だよ、高校の3年間はあっという間に過ぎていく
歩ちゃんはきっと、どんな仕事をしても活躍するだろうけど、出来ればやりたいって思えることを見つけて欲しいって思うよ」
「…やりたいことかぁ」
「進路決まる頃になってまだ悩んでたら言ってよ、いつでも相談に乗るから」
「ありがとうございます」