第8章 それぞれの春高まで
「谷地さん、どうかしたか?」
「あっ、関係あるか分かりませんが以前烏養前監督が
マイナステンポは単品では確かに凄いが、使い方が勿体無いな
と仰ってました!」
やっちゃんが答えると、コーチは驚いた顔をして
…クソジジィ…と呟く
そうか…全国で戦うためには、マイナステンポと紛れるをうまいこと組み合わせて使う必要があるってことやな
結局夕方まで練習試合は続いて、実に8セット
結果は4セットずつの引き分け
「はいドリンク、ツッキー超バテバテやん」
「…ハァハァ…当たり前でショ。僕は機械でも日向(バケモン)でもないんだから」
「しかもいつもより高く跳んでたもんな」
「…影山のやつ」
悪態つきながらも、ツッキーの表情はまんざらでもなさそうやった
みんなと別れ、スガさんと並んで歩く
靴を買いについてきてくれるって昼に約束したけど…
「不自然じゃなかったですかね?」
「んーどうだろ?俺は別になんか思われてても全然いいけどね。それより、急ご!暗くなっちゃう」
手を引かれ、スガさんと大型ショッピングモールの靴屋に入る
「で、どんなのがいいの?」
「今の結構気に入ってたんですよねー」
「スタンスミス?」
「はい、てかスガさんの趣味って信じていいんですか?私ポテイトのTシャツの印象が強すぎて」
「バカにしてるだろ」
2人で目を合わせて笑う
「今の感じが好きなんだったら…ハイテクよりローテク系ってことだろ?…PUMAのGVとか?オニツカのローンシップとかいいんじゃない?」
「どんなんですか?」
「ちょっと待って、店員さんに在庫あるか聞いてくる。足のサイズは?」
「24.5です」
「そこに座って待ってなよ」
そう言われ、フィッティング用のソファに腰をかけ、スガさんが戻ってくるのを待つ
その間に今勧められた靴をスマホで検索する
「えー、めっちゃ好みドンピシャ」
どちらもクラッシックでシンプルな白のスニーカーだった
スガさんって人の意図を汲み取ってアドバイスするの上手やなぁ…
前に勉強教えてもらった時もすごい分かりやすかったし
「お待たせ!」
箱を抱えたスガさんが戻ってくると、私の足元に屈んで箱から靴を出してくれる