第8章 それぞれの春高まで
ー歩side
影山くんに翔陽がいて良かった
微笑ましく2人を見守る
「俺は他人の気持ちとかよく分かんねぇし、言葉選びも間違うみたいです」
影山くんが言うと
「知ってる」
「何を今更」
翔陽とツッキーがツッこむ
「でも最高のセッターになれるように努力します」
そう言った影山くんに大地さんが
「それこそ今更だな、お前はずっとそうだろ」
と声をかける
ああ、いいな
みんな一生懸命チームのこと考えて強くなろうとしてる
その熱さが摩擦を起こしてぶつかり合うのなんて当たり前で
そうしてまた強くなっていく
「3年生はよく、凄い1年生が入ってくれて良かったって言いますが、それは影山くんにとっても同じですね」
武田先生が言う
影山くんにとってだけじゃなく、他の1年生も私たちもみんな、2.3年生がいてくれて良かったって思う
そして
まだまだ先輩たちと一緒にいたいって
この時がもっと長く続けばとそう思う
コートに視線を戻す
二口さんのサーブ
強烈!
崩した体勢から翔陽のスパイクがブロックに捕まる
「サーブで崩して、ブロックで仕留める…これが完璧なサーブアンドブロック」
山口くんが呟く
そう言えば山口くんはツッキーとあれやりたいって言ってたな
山口くんのサーブにツッキーのブロック…
私も見てみたいって思う
でも伊達工のプレーに見惚れてる場合じゃない
こっちも挽回せんと…
タイムアウト中コーチが翔陽に話しかける
すると翔陽は
「紛れる…ですよね」
と言った
マイナステンポで飛び出してしまうと、手練れのリードブロッカーには通用せず、選択肢からいち早く除外されてしまう
今までも試合中何回か見たことあった
翔陽が最後まで選択肢であり続けるために、マイナステンポで飛び出さず、ファーストテンポでみんなに紛れる攻撃
その甲斐もあって次のセットは烏野が奪取した
「今日、やっとセットとったね」
やっちゃんと話していると、伊達工の方から
「アザラーシ!」
と二口さんの声が聞こえる
アザラシ?アザラシてなに?
どうやらうちのペナルティ、フライングみたいなものでアザラシの体勢で体育館を一周するようだ
「アザラシかわい」
思わずスマホの動画ボタンを起動して撮影する