第6章 水族館
「冨岡さんと一緒に食べるの初めてかしら?」
「あぁ、そうだな」
「じゃあ先に言っておくわね!あの……、私たくさん食べるんだけど引かないで欲しいの!」
「…?」
予め伝えておくという事は、何かあるのだろうか。
「…そんなに食べるのか?」
隣に座っていた花里にこそっと聞いてみる。
「蜜璃ちゃんはいっぱい食べます」
普通ですよ?みたいな感じで返ってきた。
甘露寺のたくさんがどの程度なのかよく分からないが、俺は全く構わない。
そう伝えようとしたら、
「心配するな蜜璃。もしそんな事になれば俺が冨岡をつまみ出してやる」
それは嫌だ。
「俺は別に気にしない。好きなだけ食べるといい」
「ありがとう冨岡さん!」
無事摘み出されずに済みそうだ。
伊黒は麻婆豆腐定食、花里は親子丼、俺は鯖の炭火焼き定食をそれぞれ注文。
そして宣言通り、甘露寺はたくさん食べた。
かつ丼を五人前。
追加で唐揚げ定食とチキン南蛮定食。
最後に海鮮丼三人前をペロリと平らげた。
沢山食べるのはいい事だ。
初めて見た俺は胸焼けしそうだったが…
隣の花里が美味しそうに食べる姿を見て癒されながら、胸焼けを緩和させて食べていた事は、内緒にしておこう。
帰りもまた電車に揺られ、朝電車に乗った駅に着く。
伊黒と甘露寺はこの後二人で行きたい所があるそうで、ここで別れた。
俺は特に予定もなく、あとは家に帰るだけだった。
強いて言えば、錆兎に土産を渡すという用事があるだけだ。
「この後は何か予定はあるか?」
「いえ、今日はもう何もないので家に帰るだけです」
と言うので、
「俺はこの後錆兎に土産を渡しに行くが、……一緒に来るか?」
断られるのを覚悟で誘ってみる。
もう少し、一緒にいたいと思ったからだ。
すると…
「…行きたいです」
俺の誘いを受けてくれた。
用事がなかったからかもしれないが、それでも俺は嬉しい。