第8章 運命の歯車が動き出す
「はや…っい」
「―…すまない。考え事をしていた」
白哉は謝ると、今度は美穂子の速度にあわせて歩き始める。
それにホッとしたように美穂子が息をついた。
「疲れた…。これから、本当に十二番隊に?」
「あぁ…」
「そんな大げさなことじゃないんだけどなぁ」
美穂子はため息交じりでそういうと、白哉を見上げた。
そこには―…いつもと変わらない表情の白哉がいる。
(どうしたんだろ…。あんなに、焦ったような白哉は見たことなかった)
何か彼は知っているのだろうか。
自分が知らない…自分のことを。
「ねぇ、白哉」
美穂子が声をかけると、白哉の視線が美穂子へと向けられた。
「―…さっきの話した夢、なんだか知ってるの?」
「そういうわけではない」
「なら、なんであんなに焦ってたの?」
「―…先ほどの話は…まるで死神の斬魄刀との会話のようだった」
「え、でも、私…死神じゃないし」
「わかってる。だから、心配したのだ」
美穂子は白哉をじっと見つめると、首をかしげた。
すると、白哉は小さなため息をついた。
「取り越し苦労なら、それでいい。美穂子の存在は謎も多い。恋人として、心配になってもおかしくないだろう」
「そ、そうだね///」
素直な白哉の言葉に、美穂子は少し照れた。
同時に、心配をしてくれる白哉がとても嬉しかった。
これから十二番隊に行くと言うことは、よくわからない機械に乗せられていろいろ調べられるだろう。
それは少々気が重いが、白哉が一緒にいてくれれば大丈夫な気もする。
この時、美穂子も白哉も、想像もしていなかった。
運命の歯車は徐々に、その速度を上げていることに―…。