第15章 蓮華
天元のムキムキ鼠もまだ帰ってきていない。
桜華が囚われてから既に3週間目に入る。
既に情報手段すら童磨の方に握られていることになる。
状況は悪くなる一方。
だが、天元は、暁とムキムキ鼠たちは必ず帰ってくると思っていた。
「心配すんな。あいつらは、俺らを混乱させようと企んでるだけだ。お前が揃うまで命までは取らねぇだろうよ」
天元と三人の妻たちは、鬼殺隊の任務をこなしながら、この件が片付くまで狛治のそばにいてくれた。
「狛治さん…しっかりしてください」
珠世も愈四郎もこの件が片付くまでは動けないと一緒に居るが二人が手を出せるのは鬼に対してのみ。
狛治も天元も出てしまうことになれば、人間の可能性が高い信者に対して太刀打ちが出来ない。
教会に行けば人間の普通の信者もいるので、もし大きな戦いになれば避難させる人員も必要になる…。
悟もいるが、一人では心もとない。
あと一人昼に対応できる人間さえいれば…。
「ごめんください!!誰かおられるだろうか!!」
元気はつらつで久しい声。
その声を聴いて、狛治は声の方へ走り出した。
「.......!」
「狛治殿!!明子殿からの知らせで加勢しに来た!!
よもや、完全に人間に戻られたのだな!!」
「お前…!!」
狛治は胸に熱いものがこみ上げ、目頭が熱くなり声を震わせた。
そこには、真新しい隊服に煉獄の羽織を纏った煉獄杏寿郎の姿があった。
「杏寿郎…!」
「俺も晴れて隊員になった。大変な事態になってると聞いてきた。俺にも手伝わせて欲しい!」
「と、言っても、今回は留守程度しかお役に立てなさそうだがな。
久しいな…。狛治殿。」
杏寿郎の到着に安堵しながらも、焦りは消えない。鴉も暁も、ムキムキねずみも帰ってこない。
それから三日が過ぎた頃。
大きな羽音が聞こえ、戸を開けると、暁がうまく着地できずに飛び込んできた。負傷したその足には、何かが巻き付けてある。
「おい、狛治! 暁が帰ってきたぞ!」
藤の宿に天元の声が響き、皆が部屋に集まってきた。狛治を見つけた暁はその腕に飛び乗る。足についた怪我から、彼が囚われていたことが分かった。
「…遅かったな。怪我…やはり捕まっていたのか…」