第9章 月詠の子守唄
宇髄は、期待通りだと言わんばかりに口角を上げて見せた。
「そう言って貰えると思ってたぜ。詳細はまた後で聞くとして、続きを聞いておきたい。
姫さんに、胡蝶を会わせたかったのは察しができるが、なぜお前たちのところで会わないといけなかったんだ?」
珠世はそれに答えた。
「恐らく、鬼殺隊当主さまのご意向は、胡蝶さんと共にお二人の血を"共同研究"するためでしょう。わたしは、鬼の研究の行く末は、前世の縁壱さまと約束をした”鬼舞辻 無惨を倒し、鬼の世を終わらせる”ということにあるのです。」
桜華と狛治はもともと自分の血が鬼の時代を終わらせるのに自分自身が研究されることは覚悟の上だったし、400年の信頼関係がある珠世に対して、身の危険が及ばない範囲で研究をしていくという信頼があるため、動じることはなかった。
カナエも、桜華と狛治という鬼と人間では希少な存在故に研究しなければならないと思っていた。
3人の様子を見た宇髄はその反応を見て、彼女たちの冷静さにこの件に関して横から己が介入せずとも問題ないと思った。
珠世は話をつづけた。
「どのように考えても、狛治さんの人間化はいろんな要素が多すぎて、一概に桜華さんの血の力のみとは思えません。
ですが、彼女の血が鬼舞辻の呪いに作用を及ぼし、配下の鬼への精神支配から外し、ゆっくりだったようですが、人間化の作用があるようです。
ひょっとすれば”人間返りの薬”もしくは”鬼を滅する薬””鬼から生まれる毒への解毒剤”など何かしらの薬が作れるやもしれません。」
「俺たち二人は、戦いや鍛錬に支障が出ない範囲の研究に大いに協力するつもりです。」
「元々は、わたしたちは珠世さんにわたしたちの血を調べてもらうことが目的で伺うつもりだったのです。
鬼のいない世界にするための研究ならば、この体の一部を使ってもらえるのなら本望です。」
当事者である二人は、毅然とした態度でそう言った。