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鬼ヲ脱グ【鬼滅の刃/猗窩座・狛治】

第9章 月詠の子守唄



宇髄は狛治が弄りやすいと思ったのか、妻たち3人にもいろいろ根掘り葉掘りきかれては、タジタジになり赤面するのを楽しんでいる。

そんな5人を後ろに、カナエが桜華に話しかけた。

「桜華さん。わたしもあの男の子と同じように思っていますし、あなたの心の少しだけでも理解しているつもりです。」

桜華はそっとカナエの方を見る。
初めて見た時から放つ雰囲気も、波動も表情も優しくて美しい人だと思った。
それなのに、一点を見つめる眼差しは誰よりも強い。

「鬼は悲しい生き物。鬼も人間だったのに、人を喰らい、朝日を恐れる......。

私はそんな鬼を救いたいと思っていました。」

その言葉を聞きながら、今まで出会ってきた鬼を思い返し、最後には一族を葬ったあの鬼の姿が浮かび、掌を握りしめて奥歯を噛み締める。

「実際に、桜華さんと狛治さんにお会いして同じように考えておられると分かって少し安心したのです。」

優しい声色に乗せて変わらぬ柔らかい笑顔を見せるこの人はどれだけ心が広いのか.....

煉獄家など、生まれた時から鬼殺隊に縁がある者は限りなく少数。大多数は鬼の被害者だ。その被害者が己の生家とそれを支えた隊士たちのように”鬼は悲しい生き物"だと言い、元上弦だった狛治とその妻であるこの身を前にして会えたことで安心したという。
そして、鬼を救いたいという。

そのような人間は自分や家族を鬼にされた者のごく一部がそう思うだけだと思っていた。

「そうなのですね。しかし、あなたは何度も目の前で部下や同僚の死を目の当たりにして来た。そしてこの鬼殺の道を知るキッカケも良いものではなかったのではないですか?」

カナエはそう聞かれて目を細め、自分にあったことを振り返り、仲間の過去を思う慈愛を深めた表情へと変わる。

「仰る通りです。わたしは、目の前で両親を鬼に殺されました。そして、同じ歳の仲間に、母親が鬼になって家族を襲い母親を自らの手で殺めた人もいます。

それを思うと、やはり鬼は悲しい生き物です。きっと彼らが人間の頃は、人を殺す事なんて縁のない方が多くいたでしょうし。」

「.....そうですね。
彼らの大多数は人の時の心のままなら人を殺すことを一番に望んではいない.....。」

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