第9章 月詠の子守唄
宇髄はその後、明日からの打ち合わせをして一緒に食事をとり、妻3人を連れて任務へ。
3人は明日は珠世たちの状況を鑑みて同行を遠慮してもらい、4人で向かうことになった。
陽がとっぷりと沈んだ頃カナエも任務に向かい、二人のみ屋敷に残った。
暗がりから突如現れた桜華の使いの鷹、月花が窓から部屋へ舞い降りた。足には一通の文を括り付けられている。
「悟さんからね。月花有難うございます。」
その場で文を広げると、
『明日、午後3時ごろ着かれる事。承知いたしました。
迎えは明子一人向かわせます。
道中お気をつけて。』
とあった。
風呂から上がってきた狛治にそれを伝えると、「そうか。」と返事をし、そのまま先に上がっていた桜華の横に体を向けるようにして腰を下ろした。
「怖くないのか?」
優しい声色が、自分の心を案じているものだと解り胸の奥が暖かくなる。
照明のオレンジも手伝って心を包むようで、目を伏せ、息を一つ吐いた。
「どんな事実が知らされるか......怖くて仕方ないけど、今日、あの男の子と出会って少しは気が晴れました。
たとえ、わたしにどんな過去があろうとも、わたしがしなければいけないことは、長い歴史に幕を下ろすだけ。
覚悟はできたつもりです。」
「そうか。
黙ってたこと、すまなかった。確信のない、ましてや現実味のないことを言って傷つけることが怖かったんだ。」
申し訳なさそうに俯く姿は、いっぱい悩んできて言えなかったという事が見て取れるほど。
あまりにも小さくなる姿を見て、そこまで考えてくれたのだと嬉しくなる。
「そんなこと、知っていますよ...。
だから、受け入れようって思った。
何があっても離さないってずっと言ってくれたでしょ?」
"何があっても離さない"その言葉を言う時は、安心を与えたい一心で懸命に言うのにも関わらず、いざそれを伝えた相手から言われると恥ずかしいらしい。
だけど、
「あぁ。言った。ずっとだ。」
あぁ、やっぱり........
心から、愛の温かさが込み上げて表情を綻ばせる。
男は愛が溢れて女をその腕に抱いた。