第9章 月詠の子守唄
そして、狛治はなにか閃いたように目を見開いて動きをとめた。
「天元。前に桜華から鬼殺隊になる前にその"育手"に育てられて、柱が選んだり志願した者が継子とやらになれると聞いた。
それ以外は、日頃どんな訓練をしている.....」
「あとは自主的に強い先輩捕まえて手合わせを願い出たり、あんまりこれといったルートはねぇ。
岩柱の悲鳴嶼さんは元々得体の知れねぇ強さを持ってそれで成り上がり、俺は元忍の出だ。正直、つい何年かまでの体制のままで、何も変わっちゃいねぇ。
正直、地味過ぎるほど、隊士の育成環境は劣悪だ。」
桜華が知る数年前の鬼殺隊は、階級が上の者が後輩の世話をするという習わしでまかり通るほど、人数が多かった。
日神楽一族襲撃事件以来、鬼が徐々に増え、狛治が裏切りを働いたこと、生き残りがいる事でさらに増えているという状況。
即ち、人員が限られている以上隊員の出動要請が多くなるわけで、非番も少なくなる。そうなれば、後輩を育てる時間も少なくなるのも頷けた。
宇髄の言う派手と地味の基準に戸惑いつつも、2人は今の鬼殺隊の現状を知り、桜華は狛治が何故それを宇髄に問うたか解った気がした。
「では現状、入隊後に隊員を鍛え上げるという仕組みは事実上、継子になる以外は無いに等しいと.....。」
「あぁ。」
「そういう事でしたら、同行中に良い案が出せるかもしれません。それを宜しければ耀哉様に言伝いただければ幸いです。」
そういう事でしょと確認するように微笑みかけると、少し嬉しそうに狛治が笑った。
「あぁ。俺も多分同じこと考えてるはずだ。派手にいい案待ってんぜ?」
挑むような表情と任せろという笑みが宇髄と狛治との間で交わされた。
「天元。今の柱にはまだ、俺は関わっていない。
事が決まったら手合わせを頼む。そのつもりでいて欲しい。」
「おぅ!寧ろ、俺から願い出てぇほどだ!元上弦の参っていう過去と、昨日見せてもらった日の呼吸ってやつも、派手に興味深いからな。」
「宇髄さん。わたしとも是非ともお手合わせ願います!
はぁ...。これから忙しくなりそうですね!」
朝より元気が戻った桜華の姿を見て、あの優しい男児の笑顔に感謝した狛治であった。