第9章 月詠の子守唄
夕刻、宇髄が、任務前に話すことがあると彼らが使う部屋へ、カナエと狛治と一緒に呼ばれた。
「明日から、俺と胡蝶はお前たちに同行する。任務が終わって休息が取れれば、そのまま一緒に行くつもりだ。
だが、その前に、こっちの真実というものも知ってて欲しい。」
「何でしょう。」
「その前に確認したい事がある。
炎柱の後継ぎから、俺ら鬼殺隊の事を何と聞いているか聞いておきたい。」
意味深にこちらに話すそれは、深刻な問題があるように思えた。
「杏寿郎から聞いたお話でしたら、あなた方鬼殺隊の柱が、
引退する者が相次いだと。
そして、我々日神楽の名を知る者は煉獄家と産屋敷家のみ。
入隊者も減り、おのずと上の階級に上がれる者も減少したと。
現在柱は3名。あなたと、岩柱殿と、煉獄家の当主殿のみとお伺いしました。」
「それは、違う。
柱は皆、”殺された”。煉獄家だけは歴代柱を生む名家だったからか、場所を特定されねぇ工夫があった甲斐あって難を逃れたが、
ある一定の時期に抹消されるように殺されて、御館様が隊の士気が下がらねぇように、今の柱にしか真実は告げられていない。
煉獄の旦那が酒浸りになったのもそのあたりだ。
派手に過酷な事実だ。煉獄の旦那も酒浸りになるのも頷けるだろうよ...。奥方も亡くなってるしな。」
「そう、でしたか...。」
「お前は知らないのか?犯人は恐らく上弦のはずなんだが.....?」
「いや、こればかりは知らない。上弦で隠密のように隠れて人を喰らえるとするなら上弦の伍の玉壺だ。
壺に隠れて、移動することが出来るし、中に取り込むこともできるからな。
それに、無惨はいろんな擬態で人間社会に溶け込み活動もしている。人間にそういう裏で繋がっている人間がいてもおかしくはない。
鬼達は情報を共有する事ができる。特に己より格下はな。
だが、俺はそれが嫌いだった。弱者の任務の情報など価値がないと思っていたからな。」
宇髄は一瞬その言葉の信ぴょう性を己に問うが、目を背けず、自分が不利になる状況を晒したことなどを思い信じた。
「まぁ、事情はそういうことだ。それと、その事件後、鬼の被害が増えている。それに伴い、鬼殺を志す新芽も育ての元に集まっている。
派手に喜べやしねぇ状況ではあるがな...。」