第4章 友達
夢をみた。
懐かしい夢だ。
あの頃、ローはなんの前触れもなく突然いなくなった。
そして、1ヶ月後か2か月後、忘れた頃にふらっと帰ってくる。
そういうことがよくあった。
だけど、これは何回あっても慣れることじゃなかった。
毎回、突然いなくなるたびにもう二度と帰ってこないんじゃないかと不安でたまらなかった。
あんなに容赦なく叩きのめしてくるのに、いざいなくなると心にポッカリ穴が空いたように寂しい。
いなくなった間もあたしは毎日森に入ってローを待ち続けた。
いつもローがいた洞窟に入っては、一人で彼がいない日数を数えた。
森の中あちこち探し歩いては、不意に帰ってくるんじゃないかと期待した。
そして、そんなあたしにお構いなしで、特に探した風でもなく、ある日突然目の前に現れるのだ。
文字通り、目の前に、突然。
「生きてたか」
そう言って少し口角を上げて笑う。
──その夢の中でも、彼はそう言って笑った。
泣くつもりなんて全くなかったのに、涙が溢れて止まらない。
涙を堪えるのに成功する日と、しない日があった。
成功する日はひたすら不機嫌な顔をして、ローがそんなあたしを見て面白そうに話しかけてくるのをじっと待つんだけど。
夢の中ではダメな日だった。
「突然いなくならないでって!いつも言ってるじゃん…!」
ぐしゃぐしゃになって泣くあたしの頭をぽんぽんと叩くロー。
あたしが泣いている時はいつもそんな感じだった。
無表情だから初めは怒っているのかと思ったけど、3年も一緒にいると、それはどうするべきか悩んでいるときの顔だとだんだん分かってきた。
あたしが泣くとローは困るみたいだった。
どうしてローみたいな強い人がわざわざあたしに会いにくるのか。今でもそれは謎のままだけど。
いつもその優しさに甘えてわがままを言ってしまう。
あの頃は本当に幸せだった。
会えなくなった今は無性にそう思う。