第4章 友達
夢の中で、急に自分自身を俯瞰したような視点になる。
10歳くらいの泣きじゃくるあたし。
今と何も変わらない。
幼稚で自分勝手なあたしがそこにいた。
──場面が変わる。
急に辺りが白くなった。
森もローもあたしも、白にのまれて消える。
そんな真っ白な世界に、ぽつんと教会が現れた。
マリーゴールドじゃない。
ここは、ポアロ教会。
白は雪だった。
雪の上に赤の染みがあった。
これが何か、あたしは知っている。
そして、誰のものであるかも。
赤はあたしの目の前でじわじわと広がり、ふと気配を感じて振り返ると血に塗れた二人の男が転がっていた。
動かない。
そりゃそうだ、死んでいるから。
そして、これはあたしがやった。
全部、知っていた。
恐怖はなかった。
息をしない2人の人間は人形と同じだったから。
思考を放棄して、黙ってその惨劇を見つめる。
心の中には、ただ、虚無だけが広がっていた。
──不意に頭に何かが乗った。
温かい。
誰かの手だと気づくまでに少し時間がかかる。
ふと横を見ると、ローがいた。
あの頃と同じ背格好。
何も更新されていない、あの頃のまま。
頭にぽんぽんと手を乗せて、あたしを見つめる。
無表情の顔が少しだけ苦痛に歪んだ気がした。
「…悪かった」
どうして。
どうしてローが謝るの。
謝るくらいなら、そばにいてよ。
助けに来て。
夢じゃなくて、現実で頭を撫でてよ。
あの頃みたいに泣きながら詰ってやろうとして。
──そこで目が覚めた。