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【グノーシア】【短編集】宇宙を漂う船の中で

第1章 ずっと昔から【沙明】


あれは、いつだっけか。俺とツバサが5歳とか6歳とかの頃。
俺たちがまだピュアで、それ故に残酷なことを簡単に言えてしまう。
俺たちが平和にアースラで過ごしていた時代。
俺の友達のボノボ達がまだ処分されちまう前の時代。
……ツバサと複雑になる前の時代。
俺たちは出会った頃からすぐに打ち解けて、2人でよく遊んでいた。俺はミンくんって呼ばれてた。
懐かしい。
知性化された猿の友達のことを話して、一緒に自然豊かな環境の中で遊んで、花畑の中を走り回って。
誰が見ても理想的な"友達"の図だった。
俺はツバサのことが大好きで、ツバサも俺のことが大好きだった。ガキがよくやるような将来結婚するとかいうほとんど叶わないような約束までした。
「ずっと一緒にいたいよ、ミンくん」
「おれも。ツバサとずっと一緒がいい」
そんな感じの約束。
俺は結構信じてたんだよな、その約束。
俺の好きはツバサが俺に思っているような好きとは違ったから。
俺の親は研究者だったし、ツバサの親もそうだった。
両親同士で研究を進めて、その間に互いの子供達を遊ばせておく。休みの日は集まって全員で飯を食う。
そんな感じの生活をしていた。俺は幸せだった。
いつからだ?俺が不幸になっちまったのは。
「……ごめんね、私もう一緒にいられないや」
「は……?なにいってんだよ?ずっと一緒だっていったじゃんかよ!」
「……ごめん」
「……ツバサの嘘つき。もうおれのとこに来るなよ…」
言った後に気づいた。もう遅かった。
「………」
ツバサは目に一杯涙をためて、必死に泣かないようにしていた。でも俺もその時まだまだガキだったんだよな。
恋心よりも怒りが勝って、その時はツバサを許すことが出来なかった。
そのままツバサは走り去っていって、残り香を残したまま、言った通りに俺の元に来なくなっちまった。
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