第48章 混乱極まるラプソディ【渋谷事変】
――21:26
東京メトロ 渋谷駅
地下五階 副都心線ホーム
「――【閉門】」
五条を縛り上げていた肉片が縮み、バチィッと一つのキューブへ戻った。それを宙で掴み、夏油は満足げにニヤリと口角を上げる。
『それ、もう使えないんだっけ?』
真人に「あぁ」と頷き、手の中の【獄門疆】を眺めた。
定員一名。中の人間が自死しない限り使用不可だ。
そう説明してやると、『つまんな』と呟いた。
『ま、何はともあれ……』
――封印完了。
やがて、漏瑚と脹相も【無量空処】の影響から覚め、目をパチクリさせる。
「全員 起きたね。さて、今後は……」
瞬間――カタカタと【獄門疆】が震え出した。
『どうした?』
首を傾げる漏瑚に答えることはできない。ズンッと重たくなった【獄門疆】が手から落ち、ホームの床にゴンッと亀裂を立てた。
「くっ⁉ なんて奴‼」
『何コレ、どういうこと?』
真人がしゃがんで、サイコロの目のように規則的に並ぶ目を痙攣させる【獄門疆】を覗き込んだ。
「封印は完了している。だが、まだ【獄門疆】が五条 悟という情報を処理しきれていないんだ」
これでは、しばらくは動かせないな。
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数多の髑髏に囲まれ、五条はアイマスクを目元まで引き上げ、悠然と長い足を組んだ。
「物理的時間は流れてないっぽいね」
まずったなぁ……色々とヤバイ状況だ。
「……ま、なんとかなるか」
期待しているよ――悠仁、恵、詞織、野薔薇、順平。
生徒一人一人の顔を思い浮かべながら、五条は余裕の笑みを浮かべた。