第48章 混乱極まるラプソディ【渋谷事変】
「おやすみ、五条 悟。新しい世界でまた会おう」
「僕はな」
詰み――確かに、今の状態で自分は何もできない。
だが――……。
「オマエはそろそろ起きろよ」
ピクリと、男の右手が反応したのを五条は見逃さなかった。
「――いつまでいいようにされてんだ、傑」
瞬間――男の右手が己の首を掴んだ。さらにそれをギュウゥッと締め上げる。
「あっはっは! 凄いな。初めてだよ、こんなの」
声を立てて笑う男に、ツギハギが『夏油~』と手を振った。
「真人、見てくれ。君は魂は肉体の先に在ると述べたが、やはり肉体は魂であり、魂は肉体なんだよ。でなければ この現象にも、入れ替え後の私の脳に肉体の記憶が流れてくるのにも 説明がつかない」
「それって一貫してないといけないこと? 俺と夏油の術式では世界が違うんじゃない?」
「術式は世界か……フフ……いいね。素敵だ」
どうでもいい。
コイツら、何の話してんだ?
「おーい。やるなら さっさとしてくれ。ムサ苦しい上、眺めも悪い」
わざと顔を顰めて見せれば、ツギハギに向いていた男の視線が五条に戻る。
「こちらとしてはもう少し眺めていたいが……そうだね。何があっても嫌だし」
――【閉門】
バチッと派手な音を立て、五条はなす術もなくキューブへと呑み込まれた。
* * *