第28章 アンショーソに掻き立てられる【起首雷同】
「……肝試しに行ったのは部活の先輩の二人……そうだ、伏黒君。あのとき、津美紀さんも一緒にいたよ」
その言葉に、伏黒と詞織は揃って息を詰め、瞠目する。
「津美紀さんって、伏黒くんのお姉さんの……?」
順平の言葉は聞こえなかった。
顔を青ざめさせる詞織を隠すように後ろにやり、伏黒は静かに動揺を息とともに吐き出し、仏頂面を貼りつける。
「そうか。じゃあ、津美紀にも聞いてみるわ」
話を終え、二人は学校があるから、とその場を後にした。
それを見送ると、張り詰めていた緊張の糸が切れたのか、詞織がガタガタと震え出す。
「いや……津美紀が……! 津美紀……‼︎」
津美紀、と譫言のように何度も繰り返し、詞織が頭を抱えて膝を折った。
「詞織、大丈夫だ。大丈夫……!」
詞織を抱きしめ、伏黒はひたすら頭を働かせる。
どうすればいい。
どうすればいい。
津美紀の呪いが【八十八橋の呪い】によるものなら……だが、全国規模で蔓延している呪いだ。簡単にどうこうできる相手じゃない。
考えろ。
考えろ。
考えろ。
焦りから考えがまとまらない。
何も思い浮かばない。
「伏黒! 詞織! しっかりしろ! まずは安否確認だろ‼︎」
肩を掴んで呼びかけてきた虎杖の声に、伏黒はハッと我に返った。
「ユー、ジ……」
詞織も正気に戻れたようで、浅く呼吸を繰り返しながらもしっかりと焦点が合っている。
「……そう、だな。悪ィ、ちょっと伊地知さんに電話してくる」
「メグ、わたしも……」
虎杖たちを置いて、伏黒は少し離れたところへ詞織と移動した。
* * *