第28章 アンショーソに掻き立てられる【起首雷同】
伏黒は虎杖たちから離れ、急いで伊地知に電話をかけた。
三コールを待たずに電話が繋がり、詞織にも聞こえるようにスピーカーに切り替える。
今までの情報を伝え、こちらの要望を言えば、電話の向こうで伊地知が深い息を吐いた。
『事情は分かりました。津美紀さんの護衛ですね。ですが今、手が空いているのは二級術師の方だけで……』
「二級……」
「二級じゃダメ! こんな大規模な呪いを起こすような呪霊がそんなレベルなわけない! 兄さまは⁉ 兄さまを呼んでよ‼」
取り乱した様子で伏黒の腕を掴み、詞織が訴える。
『確かに神ノ原さんの言う通り、被呪者の数がこちらの想定よりずっと多いとなると、呪いの等級も見直さねばなりません。ですが、星也さんは現在 別件の任務に当たっています。そちらに行くことも、津美紀さんの護衛に当たるのも不可能です』
今回の任務は順平の実力チェックと仲間との連携を学ばせる――だが、それ以上に、虎杖の成長を加味した上で割り振られた任務。
人数を多く割いているのは、虎杖に合わせた任務と新米である順平とのつり合いをとるため、というのが伊地知の考えだ。
そこからさらに危険度が上がるとなると、二級術師の手にも、伏黒たちの手にも余る。人数でどうにかなる案件ではない。
『――個人的には撤退を勧めます。すぐに切り上げた方が身のためです』
「撤、退……?」
詞織が息を呑む。
撤退……この状況で?
やっと津美紀の呪いを解く手がかりが掴めたのに。
先ほど、藤沼たち被呪者を助けなければと思ったばかりなのに。